首の痛みと手のしびれ(藤沢・30代前半・男性)

首の痛みと手のしびれは数回の鍼灸(針)治療で治せます。

患者

年齢・性別:30代半ば、男性

住まい:藤沢市

職業:デスクワーク

主訴・症状

・首の後ろ、首と頭の付け根の奥の方から左肩・背中にかけての痛み

・肩から左腕の外側と掌の親指から中指ぐらいまでのエリアのしびれ・感覚の麻痺

・頭痛、眼精疲労、めまい、吐き気、耳鳴り、不眠、うつ状態、集中力の低下などの症状

発症の原因・経過

首や手の痛みやしびれはいきなり起きる場合と、生活にもともと原因があってふとしたことをきっかけとして起きる場合の2つがあります。この患者さんの場合は後者になります。

患者さんは日頃かなり長時間かつハードなデスクワークに従事している方でした。様々な案件を掛け持ちしており、一つの仕事が終わっても休みなく次々と仕事をこなしていかなくてはならないというプレッシャーの中で精神的にも追いつめられてお仕事をされていたようです。仕事をされている時の姿勢についてヒアリングすると、どうもパソコンのモニターの位置が顔よりかなり離れたところにあるようでした。それは手元に書類を置き、その後ろにキーボードがあり、その後ろにモニターがあるためでした。紙とデジタルデータが混在している現在のオフィス環境の中で、同じようなスタイルで仕事をされている方は非常に多いのではないでしょうか?これはかなり首に負担をかける姿勢です。5キロほどもある頭部が垂直に体幹に乗っているかぎり首にはさほど負担はかかりません。ただもし頭の位置が10度前方に傾斜したら首はどれだけ筋肉を緊張させて頭が落ちないように頑張るでしょうか? 一つ想像してみてください。ボウリングのボールを肘を曲げて地面に垂直な状態で乗っけている場合は楽だと思います。しかしいざ肘を曲げて斜めにした場合、かなりの重さを腕に感じるのは容易に想像できると思います。

つまり患者さんの男性には常日頃からこのような外力が首にかかっていたということです。そしてそのような外力を受けて首の後ろ部分全体の筋肉は非常に緊張した状態で硬直気味であったと思われます。その証拠に発症する以前にも吐き気や耳鳴りなどの症状が出ていたようです。これは頸部の筋肉の緊張による神経圧迫の典型的な症状なのです(バレーリュー症状)。

そのような生活があって首や手の強い痛み・しびれを発症したのです。

普段から軽い寝違えをしやすかったようです。いつもなら2、3日で治っていたようですが、今回は発症の朝から様子が全く違いました。横向きで寝た状態から目覚めて起きた時に左側の首の横と後面の奥に違和感を感じたようです。その後30分ぐらいで患者さんの表現を借りると「ビーン、ビーン」というイメージで痛みが増強していったようです。そして痛みとしびれは左の腕の外側と手の親指から中指までのエリアに拡大していきました。同時に左の背中(肩甲骨と背骨の間)にも痛みが出てきました。首は動かさなくても痛く、そしてどの方向に動かしても痛みが増強します。

数日我慢して生活しても痛みはおさまらず、痛みのせいでほとんど寝付けない状態で、睡眠時間は2時間うっすら眠れるかんじだったようです。その頃には首を前に倒した状態にすると若干痛みが軽くなったようです。布団で仰向けや横向けで眠れないため、ソファで体育座りする姿勢で首を前に倒してかろうじて寝ていたようです。痛みだけではなく、得体のしれないこの病態に患者やご家族はさぞかし心配と不安を感じたと思います。

頭痛や吐き気もあったため念のため脳神経外科を受診しMRIを撮ったところ頸部脊柱管狭窄症との診断がでたようです。そしてロキソニン(痛み止め)、デパス(精神安定剤)、メチコバール(神経再生薬)、ビタミンB12(神経再生薬)、胃腸薬を処方されました。しかし痛みは最も痛かったときを10とすると8程度までしか軽減しなかったようです。そのまま1ヶ月以上が経過し、整体やカイロプラクティックなどに行っても状況は変わらなかったようです。そんな中、私の知り合いを介して当院のことを知っていただき出張で鍼灸治療をすることになりました。初めにお伺いしたときは首を左前方に傾けて痛みの軽減する角度にされていて、神経系を圧迫したことによる痛みであることが推測できました。その時点で発症から3ヶ月以上経過していて、痛みはほぼ固定の状態でした。

問診や触診をしたところ、この首や手の痛みやしびれ、めまい、眼精疲労、頭痛などはいくつかの原因によって起きていると思われました。画像も拝見させていただいたところ確かに脊柱管がすこし狭まっているように思えたのですが、痛みがそこから来ているのか疑問が残りました。なぜなら同じぐらい脊柱管が狭くても痛みを起こさないという人はたくさんいるからです。

私は胸郭出口症候群(斜角筋症候群)の疑いがあるのではないかと思いました。まず、手の感覚を支配する神経(腕神経)というのは首の骨と骨の間から束になって首→肩・背中→腕→手という順に走っています。そして、この神経の束が首の出口のところで筋肉の過収縮や頸椎のズレによって圧迫されるとそこから手までの支配領域に筋緊張を誘発し、そして痛みやしびれを発するというものです。患者はこの症候群の中でも症状が非常に強いタイプなのではないかと思えました。また首の深部の筋肉の緊張が強い場合、めまい、頭痛、吐き気、耳鳴りのような自律神経症状を呈することが多々あります。これは頸部にある自律神経節の圧迫に由来するものです。これをバレーリュー症状と言い頸部の様々な疾患によって起きる可能性があります。

治療・治し方

前述した通り、患者がもし胸郭出口症候群だとすると頸部(くび)の奥の筋緊張の緩和と頸椎のズレのソフトな調整がまず第一に必要になります。単純なリラクゼーションやマッサージ施術でこの症状を治すことはできません。私はマッサージの国家資格ももっていますが、この症状では補助的にしか使いません。その理由は神経を圧迫している筋肉の一部が非常に深いところにあることです。個人差がありますが、成人男性の場合体表から少なくとも3.5センチ程度は深いところにあります。到底体表からはマッサージをしても届きません。届かせようと強く施術すると逆に首の筋肉は揉み返しを起こし、痛みが更に強くなります。この場合、痛みが強い状態でのマッサージは禁忌と言ってもいいと思います。首の筋繊維は体の中の筋肉の中でかなり細い部類に属するので、少しの圧力で微細な断裂を起こしてしまうのです。

患者が鍼(はり)を初めてご経験されるということもあり、まずは首から離れた部位で首の痛みと関係のある手のツボ(落枕)を細い鍼で刺激しました。ご本人も刺された痛みはほとんど感じることなく安心していただきました。そして次に首から手に走る腕神経を首の部分で緊張(スパズム)して圧迫している筋肉(斜角筋、板状筋、半棘筋)や背中の筋緊張部位、緊張を緩和させる背骨付近のツボへ鍼によって直接刺激し、10分ほど鍼を起いてリラックスしていただきました。もちろんこの段階でも鍼を刺したことによる痛みはありません。鍼を脱いた後に頸部を少し触診して若干ズレていた頸椎を調整しました。この段階で驚くほど痛みやしびれが収まったようで、マジックにでもかかったかのような顔をしておられました。ただこれはマジックでも魔法でもなく、神経の圧迫部位やそれによって高度に緊張を起こした組織を丁寧に触診・特定し、鍼による施術をしたまでなのです。この病態把握を間違えなければほぼ確実にこの手の痛みは取り除くことができると思っています。

初診の鍼治療を終えた10段階で8だった痛みは3程度にまで落ち着いて大変喜んでいただきました。ただ、まだ無理をするとぶりかえす可能性があると伝えて2日後にまた施術することにしました。2診目にお話を伺うと、数ヶ月ぶりに熟睡が出来て感動しておられました。睡眠は当たり前なものですが眠りに障害を起こす事は本当に辛いことです。感動という表現は決しておバーなものではありません。また耳鳴りやめまい、吐き気などの自律神経症状も全く起こらなくなったようです。頭痛は少しあったようです。さて痛みは以前の最悪な状態が10だとすると2程度になったとのことで、前回と同じく問題の部位へと鍼治療を施しました。それが終わった後に、首以外の部位の全身をマッサージしました。これにも理由があります。3ヶ月近く痛みを感じていた体というのは自律神経の反射で硬く硬直してしまうからです。なので医学的に正しい圧で全身の正しい部位へ緊張緩和を目的としたマッサージを施しました。この治療にも患者さんは非常に喜んでいただき、過去に経験したリラクゼーションマッサージ、整体との差を感じたとおっしゃっていただきました。

その後の2ヶ月間は週に1回治療をして、ほぼ完全な状態を取り戻しました。ただ前述のように患者さんはかなりのハードワークをしており首に負担のかかることにはかわりない状態です。まずパソコンのモニターがなるべく顔に近くにくるように工夫していただくために書見台(書類を乗せておく台)をモニターの横に置いてモニターの前に置かないようにしていただきました。そうすることで顔とモニターの距離は近くなりますよね。首の傾きも軽度になり首が緊張しにくくなります。このことで長時間のハードワークも若干楽になったという印象を持っていただけました。今では月に1回か2回ぐらい全身の緊張緩和を目的で鍼治療とマッサージを受けていただいています。また首や全身の緊張の予防目的で軽いジョギングメニューをしていただいてます。これは脳も活性化させ仕事のパフォーマンスも上げることができます。世界の優秀なビジネスマンもエクササイズは怠らないという方が多くいることは良く知られていると思います。簡単な運動でも脳に血流を増す事ができるので頭脳労働をするオフィスワーカーにはプラスに働くことは言うまでもありません。

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こちらに掲載された事例、体験談は患者様個人の治療成果や感想であって、万人への治療効果を保証するものでないことをご理解ください。治療による効果には個人差があります。