頭痛の原因と治し方

頭痛の患者さんの90%以上は当院の鍼灸で大幅に改善しています。

もくじ

1.頭痛の概要・症状

2.頭痛の種類・原因

3.頭痛の治療・予防

4.頭痛とツボ

頭痛の概要・症状

毎日臨床の現場にいると頭痛の患者さんは非常に多いものです。症状としては前頭部、後頭部、側頭部、眼窩、顔面などに痛みが出ます。そして頭痛の種類によってはめまい、鼻づまり、閃輝暗点(視野にキラキラとした星のようなものが現れる)、肩こり、首こりなどの症状を伴うものがあります。

多くの人が病院で痛み止めを処方され対処療法をされています。しかしその薬はその場しのぎでしかない場合がほとんどです。そんな患者さん達の多くは鍼灸治療により大幅に頭痛が軽減しています。そして仕事やプライベートを心から楽しむことができるようになるのです。

まず人の頭部領域の皮膚や筋肉には多くの知覚神経が存在します。ただ頭蓋骨の中(頭蓋内)は、脳を包む膜である硬膜や太い血管周囲に知覚神経があるものの、脳それ自体に痛覚はほとんど存在しないのです。よく後頭部や前頭部の中が痛いような感じがすると訴える患者さんがいらっしゃるのですが、例外を除いてその痛みは頭蓋骨の外の痛みなのです。ただ感覚としては中に痛みがあるように感じてしまいます。

頭痛と一口にいってもどのようなものがあって、どのようなタイプにどのような治療が適しているのでしょうか?そして注意を要するケースとはどのような場合なのでしょうか?以下に説明していこうと思います。

頭痛の種類・原因

まず頭痛は大きく分けて頭蓋骨の中の問題で起きる「頭蓋内頭痛」と頭蓋骨の外の問題で起きる「頭蓋外頭痛(慢性頭痛)」があります。そしてほとんどのケースは頭蓋外頭痛であり鍼灸治療が適応することがほとんどです。慢性頭痛で生命に危険が及ぶことはほとんどありませんが、患者さんの仕事やプライベートの質を著しく低下させてしまうので一刻も早く痛みを取らなくてはいけません。

少ないとは言え注意を要するのが頭蓋内頭痛であり、嘔吐などがあれば念のため脳神経外科を受診した方が良いと思います。たいていの場合尋常ではない頭の痛みが突発的に起こったりするものなので、ご本人がただ事ではないと気づくと思います。

ただ例外的にゆっくりと大きくなる脳腫瘍などの場合には突発的な痛みが起こらないことがあります。頭蓋内には脳圧を一定に保つシステムがあります。ゆっくりと脳腫瘍が大きくなる場合、そのシステムが機能して脳圧を下げていくのでいきなり頭痛として知覚されないのです。

頭痛の種類を大きく分けると下図のようになります。鍼灸治療でされるものは右列の一次性頭痛です。ほとんどの患者さんは一次性頭痛です。

 頭蓋内頭痛(二次性頭痛)頭蓋外頭痛(一次性頭痛)
代表疾患高血圧、動脈硬化、脳腫瘍、髄膜炎、急性硬膜化血腫、クモ膜下出血、脳動脈解離緊張性頭痛、大後頭神経痛、小後頭神経痛、偏頭痛、群発頭痛、三叉神経痛
頭痛部位 不明確 明確
痛む時間 持続的(常に痛い) 間欠的(痛みの上下がある)
外的刺激 変動しない(揉むなどの刺激) 変動する
鍼灸適応不可可能

具体的に鍼灸が適応される代表的な頭痛の症状と原因について説明します。

◉緊張性頭痛(tension headache)

頭痛の7、8割はこのタイプが多いと思います。精神緊張、抑鬱状態、頭部外傷等によるストレスによって頭部の筋肉の持続的収縮が起き筋内で血流障害が起きます。その結果筋内に発痛物質が出てきて頭痛として知覚されます。また頭や首を支える筋肉の収縮により頭の位置情報が脳に正しく伝わらず「フワフワしためまい」が起きることもあります。

緊張を起こしやすい筋肉としては頭板状筋・頸板状筋・胸鎖乳突筋・前頭筋・側頭筋・側頭登頂筋・頭半棘筋・僧帽筋・後頭下筋であり、ハチマキをきつく締めたような特徴的な痛みがあることが多いのです。来院されるほとんどのケースは緊張性頭痛であり、1回から数回の治療で改善することがほとんどです。また緊張性頭痛の場合、トリガーポイントと呼ばれる特殊なプロセスで頭痛を発生させている場合があります。トリガーポイントとは原因となっている場所と痛みの発生している場所が離れていることを言います。例えば、首の筋肉の緊張によって側頭部に痛みを放散させているケースがあります。信じがたい話かもしれませんが、臨床的にはよくあるパターンなのです。なぜこのように離れた場所に痛みが放散するのか詳しいことはわかっていないのですが、痛みの臨床現場では頻繁に見られます。

◉大後頭神経痛(great occipital neuralgia)、小後頭神経痛

大後頭神経は上方の頚椎の際から出てくる神経で、頭半棘筋や僧帽筋を貫いて後頭部から頭頂部にかけての皮膚の知覚を司ります。よって項部や頭頂部に表在性の痛みを生じます。そして小後頭神経痛は項部から側頭部・耳の周囲の皮膚を支配するので、表在性の痛みを生じます。両者とも表面的なチクチク・ピリピリと言った感覚の痛みを生じることが多いようです。また多くのケースでは緊張性頭痛と同時に起きています。診断名としては緊張性頭痛ということでひとくくりにされてしまうことがほとんどなのですが、鍼灸の治療点としては全く異なってきます。

◉偏頭痛(migraine)

圧倒的に女性に多い頭痛です。頭のこめかみから眼のあたりに起こる。ズキンズキンと拍動性のある頭痛で吐き気を伴うことも多い。月に2回程度発作的に起こる頭痛で1回の持続時間は4時間から1日間ぐらい。視野にキラキラとした星のようなものが見える(閃輝暗点:せんきあんてん)など前駆症状(前兆)のある方も多い。遺伝的な様子も非常に強く母親が偏頭痛持ちであるケースが多いものです。

原因としては以前は血管説が有力でした。飲酒、ストレス、首肩のこり、月経、天候などのストレスが起こった時に頭部の血管内にセロトニンが過剰分泌されます。セロトニンは血管収縮作用がああるのですが、すぐに代謝されて急激に減少してしまいます。その時の反動で血管が拡張し拍動するような痛みが生じるというものです。

ただ現在有力な説としては三叉神経血管説です。まず脳の血管の周りには三叉神経という特殊な神経が張り巡らされています。三叉神経の興奮で血管が異常拡張したり炎症を起こしてしまうというものです。実際に三叉神経の興奮を抑えるような針治療をすることで痛みがおさまるので、この説はかなり信憑性があると考えています。

歳を重ねるごとに痛み自体は軽減することが多いのですが、脳の過敏状態として残ってしまうこともあり不眠・めまい・耳鳴り(頭鳴)などが強くなります。生理時にはエストロゲンの減少がセロトニン量に影響を与えることで偏頭痛を引き起こします。

◉群発頭痛(cluster headache)

1年に1回ほど数週間から数ヶ月に渡って群発的に片側の目の奥に発生する頭痛で、30〜40代の男性に多いです。睡眠中に起こりやすく悪心嘔吐はない。また目をえぐられるような激しい痛みと目の充血、流涙、鼻汁などの自律神経症状を合併することが多い。

原因としては内頸動脈という首の奥にある動脈が血管拡張を起こし、近くにある自律神経(交感神経)を障害(抑制)すると同時に周囲の炎症を引き起こして副交感神経を刺激して自律神経症状を引き起こしていると言われています。

群発頭痛の発端になる内頸動脈が拡張する理由についてはおそらく交感神経が低下したことによって、トレードオフの関係にある副交感神経が優位になます。副交感神経は血管を拡張する作用があるため血管拡張によってその血管を取り巻く三叉神経が緊張しその情報を大脳皮質に痛み情報として伝えることで激烈な痛みを知覚しているのだと思います。そして副交感神経の働きとして鼻水や涙を出したりする作用がありますが、群発頭痛によって異常に流涙が出たりするのは副交感神経が過剰に優位になったためであろうと思われます。群発頭痛の発作が春先に出ることが多かったり(自律神経が乱れやすい時期)、夜間に出やすかったりするのはまさに副交感神経の働きによるものと言えます。

いずれにせよ群発頭痛を起こす患者さんは基本的に自律神経を乱しやすい性質を持っていると思われるため発作を起こさない時期に自律神経を調整する鍼灸治療をして全身を良い状態にしておくことが重要であると考えています。

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頭痛の治療・予防

当院に来院される患者さんには頭痛を主な症状としてご来院される方もいれば、肩こり首こりの随伴症状、自律神経失調症や更年期障害の随伴症状としてご来院される方など頭痛もちの患者さんはかなり多くいらっしゃいます。そしてその大半は針治療で改善させることができています。たいていの患者さんは内科や整形外科などで頭痛薬を処方されるのですが、薬なしではいられない状況になってしまっています。偏頭痛や群発頭痛ではトリプタン製剤(イミグラン、ゾーミック、レルパックスなど)、エルゴタミン製剤、ロキソニンなどの鎮痛薬(NSAIDsなど)などです。

一般的な慢性頭痛に有効な治療は鍼灸治療です。

以下にそれぞれのタイプに合わせた治療法・セルフケアをご説明します。

◉緊張性頭痛

既にご説明の通り、緊張性頭痛は頭部の筋肉の緊張によって直接痛みが出ているケースと頸部(首)や肩の筋肉の緊張によって頭へ痛みを放散させているケース(トリガーポイント)があることをご説明しました。いずれのケースにおいても筋緊張部位への鍼治療が症状改善には効果的になります。ただ当然のことながら緊張している筋肉を特定するスキルと緊張している筋肉の中で最も鎮痛効果のあるポイントを定めるには鍼灸師の腕次第ということになります。また緊張性頭痛に関しては症状が軽い場合はセルフケアが可能です。

痛みの場所と鍼灸及びマッサージ(セルフケア)部位はこちらの通りです。

痛む部位と緊張している筋肉を確認していただいてご自身がどのパターンの緊張性頭痛なのか判断してみてください。

1)胸鎖乳突筋

胸鎖乳突筋が緊張することで前額部、目の周囲、前頭部などに痛みを放散することがあります。症状が軽ければ胸鎖乳突筋をソフトにマッサージするようなセルフケアでも多少の改善はあるかもしれませんが、大抵の場合胸鎖乳突筋の緊張は強い場合が多いので鍼治療で取ってしまった方が早いです。

2)僧帽筋

僧帽筋が緊張することで側頭部や耳の後ろ、エラの部分などに痛みを放散することがあります。症状が軽い場合は軽く肩をマッサージすることで症状が改善することが多いです。

3)頭板状筋・頸板状筋

頭板状筋に緊張が起きた場合は頭頂部に痛みを放散することが多々あります。痛みを発生させるポイントになる部分は頭板状筋上部にある風池と言われるツボとほぼ一致します。

この部が原因になる痛みの場合、セルフケアとしては頭を上に向けて風池部を親指で押すことで痛みが軽減することもあります。

頸板状筋が過緊張すると下図のように側顔面部や外眼角部に痛みを放散します。この筋肉のマッサージやストレッチは非常に難しいためセルフケアは困難と思われます。

4)頭半棘筋・頸半棘筋

この筋肉が過緊張することで後頸部や前頭部に放散痛を起こすことが多いです。

この筋肉は僧帽筋・板状筋の下にあります。セルフケアとしては痛い側の筋肉の方向(斜め後ろ)に頭を倒してこの筋肉を弛緩させてください。その状態で後頭部を親指で持続的に指圧してください。決して引っ張るようなストレッチはしないでください。この筋肉による痛みも鍼治療では簡単に取ることができます。

5)後頭下筋群

後頭下筋群は大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋の4つから構成され後頭部の最深部に位置するため通常触診やマッサージをすることは難しいと思います。この筋肉が過緊張を起こすと側頭部に放散痛を出します。長時間上を向いてペンキを塗ったり、何か作業をしていると本筋が緊張を起こしてしまうケースがあります。

6)側頭筋

側頭筋は咀嚼筋の一部なのですが、精神的な興奮や上歯痛、顎関節症などで過緊張を起こすことが多く、痛みは側頭筋部に直接出ます。こめかみをセルフケアとしてはこめかみのマッサージが有効です。おそらく自然に指が側頭筋をマッサージしていることが多いと思います。指先できつく押すよりも人差し指から小指の4指の腹を使って優しくマッサージする方が効果的です。

◉偏頭痛

前述した通り、偏頭痛の痛みは頭蓋内血管由来のものと三叉神経由来のものとの混合なのですが、鍼灸治療の場合は三叉神経にアプローチをすることで改善させることができます。具体的には上位頸神経(C1〜C3)への針治療による刺激をすることになります。東洋医学的には「天柱」というツボになります。セルフケアとしては顎を上に向けて頭を後屈させた状態に置いて、このツボを親指で持続的に指圧してみてください。軽い症状であれば緩和することもあるかもしれません。ただ指圧で緩和するのは一時的なものです。ぜひ鍼灸治療を受けてください。

◉瘀血性頭痛

これは緊張性頭痛や偏頭痛と比べるとレアなケースとなりますが、稀に下図の「風府」や「強間」と呼ばれるツボの近くに発赤がみられることがあります。これは特に頭重感を伴う頭痛の患者さんにみられるものです。脳内外の微細な血流を調整している導出静脈の機能低下によりうっ血をすることで脳圧や脳内温度が高まることで痛みを発するというものです。この場合発赤部位を針治療で軽く刺激することにより症状が改善されます。

頭痛とツボ

頭痛に適応するツボは非常に多く存在します。

下の図と照らし合わせて自分の頭痛はどのツボと対応する頭痛なのかを試してみてください。

◉膀胱経

玉枕(ぎょくちん)、天柱(てんちゅう)

◉胆経

頷厭(がんえん)、懸顱(けんろ)、懸釐(けんり)、

風池(ふうち)、完骨(かんこつ)

◉督脈

風府(ふうふ)、脳戸(のうこ)、強間(きょうかん)