ぎっくり腰を鍼で1、2回で治すことを心がけています。
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目次
ぎっくり腰の症状
ぎっくり腰の症状は、重い荷物を持ったときや腰を回して振り返ったときに一瞬にして発生する痛みとそれに伴う腰部の関節の運動障害のことです。ぎっくり腰を経験されたことのある方にとっては説明の必要がないほどの激痛ですよね。結論から言ってしまうとぎっくり腰の治療に針灸は非常に良く効きます。
西洋医学的には「急性腰痛」「腰椎捻挫」、東洋医学的には「稲妻腰」などと表現されることがあります。ドイツ語圏では「魔女の一撃(Hexenschuss)」と一般に称されることもあります。私の臨床経験から、発症される方は圧倒的に男性が多く、年齢は30歳から55歳ぐらいと幅広いという印象があります。そして問診をしていて感じるのは、学校生活や仕事、その他の人間関係の中で非常に強い精神的・肉体的ストレスを感じているときに発症しているケースが多いことです。この事はのちほどご説明するぎっくり腰の発生に関わる重要な要素です。
ぎっくり腰は前かがみのまま動くことができなくなるという特徴があります。そして咳やくしゃみをしても激痛が走ります。前屈みになってしまうのは後述する大腰筋が痙攣(過緊張)をしていることで腰骨をまっすぐにできなくなります。また咳やくしゃみをしても痛いのは、くしゃみによって横隔膜が痙攣して近くにある大腰筋を刺激するからなのです。
発症してから治るまでの期間は治療次第だと思っています。何もしないと一週間ぐらいで激痛は引くと思いますが、多くの方はその後に慢性腰痛に悩まされたり、数ヶ月後に再びぎっくり腰を発症して、以降繰り返すようになります。ただ、発症したときに腰及び全身に適切な治療をしておくことで迅速に痛みが無くなったり、再発や慢性腰痛への移行を防ぐ事ができます。もちろん慢性腰痛になってしまったとしてもあきらめないでください。少し時間はかかりますが針治療をすることで治ります。
ぎっくり腰の原因
そもそもぎっくり腰とは腰がどのような状態になっていることなのでしょうか?これに関してなかなかわかりやすい説明を受けたことがない方も多いのではないでしょうか?
これは現代医学で100%解明しきれていないので、正しく説明されたものが少ないのです。治すことはできても、原因をよくわかっていない治療家は非常に多いと思います。
ぎっくり腰には2つのパターンがあります。
1つ目は大腰筋痙攣(だいようきんけいれん)です。インナーマッスル(体幹の深層筋)である大腰筋の一過性の過緊張です。過緊張とはこの場合ふくらはぎのこむら返り(足がつる)のようなものをイメージしてみてください。重いものをいきなり持ったりしていきなり起きることもあれば、精神的・肉体的ストレスなどで体全体の筋緊張が徐々に進行しマックスに達したときに激痛が起こります。このタイプがぎっくり腰の90%以上だと思っています。
2つ目は動作をした瞬間に腰部の関節(腰椎椎間関節)の境目にその関節を覆っている膜(滑膜)が挟まれて傷がつき炎症を起こす事により痛みが発生することです。腰部の関節で炎症が起きたことにより腰部を覆う筋肉に特殊な現象が出てきます。それは炎症部位を保護する目的で周囲の筋肉が板の様に緊張して硬くなるのです。場合によっては硬くなった筋肉の一部が微細に断裂することもあると思います。硬くなるとどのようなことが起きるかと言うと、まずは腰部を動かしにくくなりますね。そして筋肉が硬くなって、血管が圧迫されたり、痛みによって自律神経(交感神経)が緊張状態になると腰部の血液循環が悪くなり、組織に血液が行きにくくなります。組織に血液が行かないと、その細胞は壊れて死んでしまうのです。細胞が壊れるときに出てくるのが発痛物質と呼ばれるもので、それが痛みの原因になります。これは腰痛の慢性化とも関わってくる重要な現象なのです。
ぎっくり腰の鍼灸治療、対処法
発症当初は炎症が強いので、まずは安静にしてください。発症直後はくれぐれもネットで紹介されているような医学的根拠のはっきりしない体操やストレッチは避けてください。悪化させることにもなりかねません。そしてご自身や親族の方に患部を触ってもらって熱感が強いようでしたら応急処置として氷を入れた袋で冷やしてください。熱感がなければ冷やさなくても大丈夫です。また寝るときは横向きで腰部をエビのように丸めて寝たり、仰向けであれば膝の裏に座布団などを畳んで入れて膝を少し曲げた状態で寝ると痛みが多少緩和される人が多いように思います。それで痛みが緩和しない方はすこし別の筋肉が痛んでいます。市販のロキソニンは効くケースと効かないケースがあるようですね。ただ効いたとしても一過性のもので再び痛みが襲ってくることが多いと思います。
ぎっくり腰を発症したときのおすすめは、なんと言っても鍼灸専門院で適切な鍼灸治療を受けることです。これは針灸師の腕と患者さんの状態によると思いますが、効くときは一回の治療で痛みが消えることがあります。このケースは炎症のほとんど起きていない筋肉の緊張によるぎっくり腰だと思います。実際に私の臨床経験の中でも一回で治るケースがほとんどです。一回で治らなくても3回目ぐらいまでに痛みは大幅に減少していることがほとんどです。また適切な針治療をするメリットは痛みが取れることだけではありません。今後のぎっくり腰の予防になるのです。これは本当に大事なことです。一部の整体や指圧・マッサージなどでもその時の痛みが軽減することはあります。ただ、針のように患部に直接物理的に作用することができないので、再発することが多いのです。その点針治療では再発しにくいと感じています。針治療による痛みもほとんど感じないと思います。
そして冒頭に記載した腰痛とストレスの関係が非常に重要な要素なのです。ぎっくり腰を発症したほとんどの人が強いストレスを感じていた期間やストレスを受けた期間の少し後に発症していることが極めて多いといことです。恐らくストレスを受けたことで自律神経(交感神経)が優位になって血管が収縮します。そして腰部の筋肉が硬くなっていたり、関節の運動が正常でなかった可能性が高いと思います。そういう精神的なストレスが急性腰痛や慢性腰痛のベースになっていることが本当に多いと思います。そして厄介なことは精神的にストレスが去っても体の筋肉や脳にはそのときのストレスによる影響が残ってしまっていることが多いのです。なのでストレスが去ればそれによる影響がなくならないケースが多くあって、それによって二次的にいろいろな症状を起こしてしまうケースがあると感じます。
※鍼灸治療を受けるまでに時間がある場合。例えば治療が次の日になるような場合にはエビ姿勢で眠るか、仰向けで膝の下に折りたたんだ座布団のようなものを入れて膝を曲げてください。少しは痛みが軽減すると思います。
ぎっくり腰を起こした際に針治療を選ぶメリットはもう一つあります。それは再発が起こりにくくなったり慢性的な腰痛も緩和してしまうことです。なのでぎっくり腰を起こしたときには整体でもマッサージでもなく絶対に鍼灸(針治療)なのです!!ぜひ2回以内に治せる治療院を選択してください。言うまでもなく勉強不足だったり腕が悪いとまともに治せません。
ぎっくり腰とストレッチ
そもそもぎっくり腰はストレッチで治すことはできるのでしょうか?
結論から言うと難しいです。とくにぎっくり腰を発症してしまってすぐのような状態でストレッチをしてしまうと痛みや腰部の筋緊張が増幅してしまいますので、絶対にやらないでいただきたいです。
もちろんいつまでの腰のストレッチをしてはいけないというわけではありません。ストレッチに関して患者さんに頻繁にお伝えすることがあります。それは異常緊張している筋肉が鍼灸治療でほどよく緩んできたらストレッチが可能だということです。
ぎっくり腰で問題になる筋肉として腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)の異常緊張が挙げられます。下図は体を正面から見た図です。3種類の筋肉を合わせて腸腰筋と呼びます。この筋肉はインナーマッスル中のインナーマッスルと言ってもいいぐらい体幹の中央にあります。腹部と背中の間にあるのです。この筋肉がふくらはぎのこむら返りのような状態になることが「ぎっくり腰」なのです。
※大腰筋はPsoas Minor(Major) Muscleです。
ぎっくり腰を起こしている場合、この筋肉が異常緊張していまうので、身体は自然に前屈みの状態になります。この筋肉を伸ばすためには下図のようにどちらかの足を後ろ側にもっていき逆側の足の膝を前に出すような姿勢になります。
ただ、このストレッチをぎっくり腰が発症してすぐにやってしまうと身体の生理的な反射でさらに緊張度を増してしまうのです。
そうならないためにまずは鍼灸治療で生理的な反射が起こらないレベルにまでこの筋肉の緊張を緩めるのです。「ぎっくり腰の痛みが大部分引いたけど、ちょっと違和感がある」ぐらいの状態になって初めてストレッチが意味をもってくるのです。
ただストレッチが可能かどうかの判断基準はケースバイケースなので、できればしっかりした腕のある鍼灸師に相談の上、実施していただきたいです。
ぎっくり腰の改善例・完治例
今まで藤沢市を中心にぎっくり腰の鍼灸治療を数多くこなしてきました。そして鍼灸治療だけでなくマッサージ、整体、カイロ、オステオパシーなど様々な手技治療を行ってきた経験から言えることは、ぎっくり腰の第一選択は鍼灸治療だということです。鍼灸治療は改善の即効性、治療回数、再発予防、どの観点からも最も優れていると思います。ただ、鍼灸院には質に雲泥の差がありますので鍼灸院選びは慎重に行ってください。
以下に典型的なぎっくり腰の症例を挙げますのでご覧いただければと思います。
ぎっくり腰と間違われる疾患
ぎっくり腰に対して適切な針治療を施せば、通常は1、2回の短期間の針治療で治ることがほとんどです。もし治らない場合には、次のような疾患が考えられます。
・尿管結石・・・
ご存知の方も多いと思いますが、尿管に結石が詰まると脂汗が出るほどの痛みが腰にも走ります。そして咳やくしゃみをしても痛いのです。まさにぎっくり腰と症状が似ています。間違って整形外科や鍼灸院に来てしまうのです。
・急性ヘルニア・・・
椎間板に強い圧力がかかって椎間板の中の髄核(ゼリー)が外に飛び出してきて神経を圧迫します。そのことで痛みが出ます。たいていどちらかの足にも坐骨神経痛のような痛みやしびれの症状が出ています。
・腰椎骨折
これは問診時に痛みが出た日のことをしっかりとヒアリングできていればわかることも多いです。実は痛みがでる前に転倒している場合などはわかりやすいと思います。ただ圧迫骨折の場合も同じような痛みが出ますのでご高齢者の場合はこちらの可能性も視野にいれて治療をしていくことも多いです。
ぎっくり腰の予防と腹筋
まず結論から。
ぎっくり腰の予防に腹筋は効きません。
誰が初めに言い出したのか、ぎっくり腰を含む腰痛の改善や予防のために腹筋をやると良いという話を医療者が患者に伝えているというのです。
まずぎっくり腰一つをとっても痛める筋肉は複数あり、腹筋運動とは全く関係のない筋肉もあります。なのにぎっくり予防に腹筋というのはあまりにおかしな話です。
このあたりに話は他の記事(『腰痛には鍼灸です』)に書きましたので参考にしてください。とにかく腰を痛めた人や痛みがおさまった方でも腹筋は絶対におすすめしません。
現在初回限定の価格を設定しています。この機会に国家資格者による質の高い鍼灸治療をご体験ください。
【免責事項】
こちらに掲載された事例、体験談は患者様個人の治療成果や感想であって、万人への治療効果を保証するものでないことをご理解ください。治療による効果には個人差があります。