膝の痛み(膝関節痛)(藤沢・63歳・女性)

膝関節痛には鍼灸が効果的です。1、2回で治るケースもあります。

患者

病名:膝関節痛

性別・年齢:女性、63歳

お住まい:藤沢市

お仕事:主婦

症状・経過

・膝関節全体の痛み、違和感。階段を降りるときの膝関節の痛み。

・膝関節が噛み合ないようなグラグラした感じがする。

・大腿部(もも)から足にかけて場所を特定しにくいような痛み出る。

年齢の経過とともに50代半ばぐらいから膝関節がグラグラするような違和感を感じることが増えて、サポーターなしではなんとなく不安な状態でここ数年は常に膝のサポーターを付けているとのことでした。整形外科では加齢により軟骨がすり減って痛みが出ていると説明されたようです。病院での治療や整体院での治療では全くと言っていいほど症状が治まらなかったようです。そんな状態で痛みを訴えることが増えている中で息子さんから鍼灸を勧められたようでした。息子さんは当院の鍼灸治療で腰痛が改善したことから、鍼灸に対して良い印象を持っていました。私からも「身体の様々な痛みに鍼灸は効きます」という説明を息子さんにはしていたため、お母さんの膝痛に関して相談を受けて治療させていただくことになりました。

病院では加齢により膝の軟骨がすり減って痛みが出ているという説明を受けたようですが、膝とともに大腿部から足にかけての痛み、違和感やグラグラするような感じがすることから、違った病態なのではないかと考えて治療に入ることにしました。

治療

膝の痛みを訴える方はご年配に限らず非常に多いと感じます。その中で鍼灸の不適応症でなければ治療に入るようにしています。鍼灸の不適応症とは膝内障と呼ばれるもので痛みが発生したきっかけが明確なのも、例えばスポーツによる外傷などによって起こった痛みです。具体的には重度の前後の十字靭帯損傷や半月板損傷などになります。軽度であれば鍼灸でもできないことはありません。また軟骨のひび割れや関節鼠(ねずみ)なども鍼灸では難しいと思います。

逆に言えば上記のような膝関節の痛み以外の慢性的な膝の痛みの多くは鍼灸で治るケースが非常に多いのです。

病名やタイプで分ければ変形性関節症、鵞足炎、膝蓋下脂肪体炎、坐骨神経痛による膝痛、大腿四頭筋の緊張による膝痛、内転筋群の緊張による膝痛、ハムストリングスの緊張よる膝痛、下腿三頭筋の緊張による膝痛、腸骨筋の緊張による膝痛、膝窩筋・足底筋による膝痛、など様々な種類があります。そしてどれも治癒するまでの期間はそれぞれ異なりますが鍼灸で改善することが多いのです。ただこのタイプ分類を間違えてしまうと鍼灸治療をしたところで治ることはありません。当然の話ですが間違った原因にアプローチしても効かないのです。ですので膝関節の痛みを訴える患者さんが来院された場合には、どのタイプの膝痛なのかを見極める眼が鍼灸師には最も求められるのです。

さてこの患者さんはどのタイプに当てはまるのでしょうか?答えは腸骨筋という骨盤の内側に付着している筋肉の過緊張による膝痛です。膝だけでなく、大腿部に場所を特定しにくいような痛みが出ていることから推測ができます。大腿部(もも)や膝は大腿神経によって知覚を支配されています。その大腿神経が腰部や骨盤内の緊張した筋肉(腸骨筋)によって圧迫を受けると大腿部や膝に痛みや違和感、膝の動揺感(グラグラ感)を呈することがあるのです。もし大腿部に場所が特定できるような圧痛(押して痛みがでる)があれば違う病態になりますが、今回は膝とは離れた部位で起きた大腿神経の圧迫によるものです。

治療方法は腰部と骨盤付近の緊張している筋肉への刺鍼が中心となります。ツボで言えば大腸兪、外大腸兪、腰部夾脊(きょうせき)、関元兪、五枢、維道と言ったところです。これらの経穴に適切な長さの鍼を打っていきます。この患者さんの場合はそれぞれのツボに非常に快適な響き(鍼独特の効いている感覚)があり、治療直後からその効果を感じていただいたようです。今まで足の重だるさを感じていたようなのですが、それが全くなく腿上げを楽しそうに何度もされたいました。そして膝の違和感もほとんどなくなりサポーターをしないで帰ったのです。大腿部の違和感も半分以上無くなっていたようです。このように1度の治療で劇的な効果がでることも病態によってはありえます。ただ通常は複数回の治療をしていく中で痛みが徐々に沈静化することが多いです。

膝の痛みは様々なタイプがあり、それぞれに対して鍼灸の方法も全く異なってきます。今後は他の症例についても記事にしていきたいと思います。

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