腰部の神経圧迫からくる膝関節痛のパターン

患者

病名:膝関節痛

※整形外科による診断は変形性膝関節症、内側半月板損傷、内側外側側副靭帯損傷

性別・年齢:女性、72

お住まい:藤沢市

お仕事:主婦

 

症状・経過

・右膝関節内側の奥の痛み(階段を降りる時には特に痛む)

・右腰部の痛み

 

患者さんは40代頃から腰痛持ちで、腰部の痛みや張りをしばしば感じていたようです。ただ痛みの程度はさほど強い訳ではなく、ストレッチなどをしてなんとかしのげる程度だったようです。50代前半で車の交通事故を起こした際に右足の前十字靭帯を切って手術をしているのですが、その時にはさほど痛みは出ていなかったようです。ただ手術を担当したドクターからは高齢になった時に膝の痛みが出てくるかもしれないと伝えられたそうです。そして70代になってから痛みが出現し始めました。問診でよくお話を伺って行くと「こむら返り(足をつった)」をした翌朝から痛みが出てきたということでした。整形外科に行ったところ変形性膝関節症、内側半月板損傷、内側・外側側副靭帯損傷などの診断があり、痛み止めと湿布(モーラステープ)を処方されたようです。そして痛みが酷くなったら人工関節なども勧められたようでした。ご本人は手術は避けたいということで、色々な保存療法をご検討していたようです。ご自宅が鍼灸院のご近所だったことでお問い合わせがありご来院いただくことになりました。

 

膝の痛みの鍼灸治療

まず膝の痛みというのは痛みのある場所が原因で起きている場合と腰から足へと向かう神経(足の感覚や運動を司る)に何らかの問題が生じて起きる場合の2パターンがあります。問診時に腰や臀部などに痛みがあるかどうかを確認しながら、膝蓋骨(膝のお皿)や膝関節の左右上下、膝裏などを押して痛みがあるかどうかを確認したり、特殊なテストを実施してどこに問題があるのか確定して行きます。問診と触診によって痛みの原因が腰部のインナーマッスルにあると推定ができましたが、念のため整形外科で診断されたことが痛みの原因になっているのかどうかを確かめるためにテストを実施しました。内側半月板損傷に対してはアプレー圧迫テスト、マックマレーテスト、ステインマンテスト、側副靭帯損傷に対してはアプレー牽引テストなどを実施します。いずれのテストもはっきりとした陽性所見が出ません。また大腿部の筋肉が硬くなって膝蓋骨を圧迫して痛みが出るケースもあるのでそのあたりの硬さも丹念に確認したところほとんど硬さも見られません。変形性膝関節症については触診したところ痛みがでるほどの変形は見られませんでした。ちなみに患者さんは膝の内側に痛みがあったのですが、内側半月板には知覚神経がないという説もあるため、その損傷による痛みは無いという考え方もあります。

触診や徒手的検査、問診などを総合して判断するとやはり腰部のインナーマッスルである大腰筋の緊張によって膝の痛みが出ている可能性を優先して治療しました。まず、膝の知覚を支配する神経は腰椎から出てくるのですが、出てきたところで過緊張を起こした大腰筋や腰方形筋などの筋肉によって圧迫されると、あたかも膝で痛みが起きているように錯覚することがあるのです。これは膝に限ったことではなく足の色々な部分について言えます。

まず大腰筋に対する針治療と大腰筋の緊張と関係と関係があると言われている内くるぶし付近のツボ(後脛骨筋腱)に対して針治療を実施しました。この時点で起立から歩行を試していただいたところ痛みは消えていました。その後、念のため腰や臀部の違和感のある筋肉を緩めるための鍼灸治療を実施して治療を終えました。膝の痛みは1週間後に戻ってきてしまったようなのですが、初診から2週間後に再度治療をしたところその後は膝に痛みが出ることがなくなったようです。現在は昔から患っている腰痛の治療のため月に1回程度ご来院いただいています。膝というのは本当に様々な場所が原因で痛みを出すものです。

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