はじめに

起立性調節障害・起立不耐症

小中学生を中心に「起立性調節障害(OD)」や「起立不耐症(OI)」と診断されるお子さんがいます。朝なかなか起きられず、立ち上がると気分が悪くなったり、動悸やめまい、腹痛を訴えたり。ご本人もご家族も色々な病院を回ったのに思うような成果が得られず、つらい毎日を過ごされているかもしれません。
当院では「鍼灸が効くって聞いたけど、本当に?」というお問い合わせをいただくことも多いです。今回はなぜ鍼灸が起立性調節障害に効果的なのかを、できるだけやさしくご説明いたします。

起立性調節障害って何が起きているの?

人間の体は、自律神経という無意識に働く神経によって調整されています。
例えば、朝起きたら血圧をあげてシャキッとする
立ち上がったら脳に血が届くように調整する
こういったことはすべて自律神経の仕事です。
でも起立性調節障害の子どもは、この調整がうまくいかず、立ち上がると血圧が下がったままになり、脳に血が届かずにめまい・立ちくらみ・だるさ、腹痛などが出てしまうのです。

鍼灸は「自律神経のバランス調整」が得意

鍼灸は、東洋医学のイメージが強いかもしれませんが、実は近年の研究で、自律神経を整える働きがあることが科学的にもわかってきています。
鍼(はり)やお灸を体にある「ツボ」に打つことで、
血流がよくなる
神経の興奮をおさえる
リラックスを促す
などの効果があり、交感神経(活動モード)と副交感神経(休息モード)のバランスが整いやすくなるのです。
特に、お腹や手足にあるツボへの鍼刺激が、自律神経や血圧調整に関わる神経(迷走神経など)に作用することがわかってきています。

鍼灸施術による変化

当院でも、起立性調節障害で来院されるお子さんに鍼灸を行うと、
朝の目覚めが少し楽になる
頭痛や吐き気が減って学校に行きやすくなる
イライラや不安が減って、気持ちが落ち着く
といった変化を実感されることが多いです。
もちろん個人差はありますが、「体の土台が整ってきた感じがする」と親御さんが気づかれることも少なくありません。

科学的な裏づけもあります

「でも、鍼って本当に効くの?なんとなく良さそうってだけじゃないの?」
そんなふうに感じる方もいるかもしれません。

実は、鍼灸が自律神経や血圧調整に良い影響を与えるという信頼できる研究結果も出ています。
研究の内容としては下記のようなものです。下記はpubmedに掲載されている論文の要約です。
※pubmedは米国国立医学図書館とアメリカ国立衛生研究所が運営しているサイトで、専門家による審査に通らないと掲載できません。

「電気を流す鍼治療によって、自律神経が整い、心臓の働きや血圧の調整が安定することが研究で明らかになりました。特に立ちくらみやふらつきを改善する効果が確認されており、起立性調節障害のような自律神経の乱れによる不調にも、鍼灸は有効なサポート手段として期待されています。」

👉 Electroacupuncture improves orthostatic tolerance in healthy individuals via improving cardiac function and activating the sympathetic system(PubMed)
参照リンク:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22791300/


起立性調節障害は、お薬だけに頼らず、「体の回復力を高める」アプローチがとても大切です。鍼灸は、副作用も少なく、自然に体のバランスを整えることができる方法として、ぜひ知っておいてほしい選択肢のひとつです。
もしご家族やお子さんのことでお悩みがあれば、どうぞ一度ご相談ください。