肩こりの根本的な治し方

肩こりの根本治療には鍼灸が適しています。

関連記事:首こりの鍼灸治療

目次

1.はじめに

2.肩こりとは何か?

3.肩凝りの原因・種類

僧帽筋、棘下筋、棘上筋、肩甲挙筋、菱形筋、上後鋸筋、頚板状筋、

最長筋(左)腸肋筋(右)、半棘筋、多裂筋

小胸筋(肩凝り姿勢を起こす筋肉)

首のこりである場合(後頭下筋群)

4.肩凝りの治療・治し方

対症療法的な針治療

根本治療的な針治療

はじめに

まず、これだけは申し上げたいです。

肩こりをほぐすには針治療が最も適しています。

もちろん肩凝りに伴う頭痛、吐き気、めまい、耳鳴り、立ちくらみなどの随伴症状も消退していきます。

整形外科でもマッサージでも整体でもなく鍼灸(針治療)です。

鍼灸治療は自律神経系や原因のわからない不定愁訴などにも非常によく効くのですが、何よりもまず筋肉の緊張(こり)が取れるということを、日本中の人に知っていただきたいと思っています。

慢性的な肩こりに悩まされていて、初診で当院の治療を受けられた方はその高い効果を実感していただけます。「もっと早く針治療を受けていればよかった」「マッサージと効果のレベルが違う」など頻繁に患者さんがおっしゃる言葉です。

藤沢、辻堂、鎌倉、茅ヶ崎など湘南エリアの方でこのホームページをご覧の方はぜひ当院にご来院ください。

関連記事:なぜ針治療でコリがほぐれるのか?

以下に、肩凝りってどんなものなのか?どこの筋肉がこるのか?鍼灸ではどういうプロセスでコリを解消していくのか?などをご説明したいと思います。

肩こりとは何か?

肩こりとは何でしょうか?なぜ不快感を産むのでしょうか?

当院には「肩が痛い」「肩コリが治らない」「肩や腕が重い」「首と肩が痛い」など肩周りの症状を訴えて患者さんが来院されます。そのような患者さんのほとんどの方は首や肩、背中のどこかの筋肉が緊張して短縮しています。筋肉が短縮すると筋肉にを包む膜である筋膜上の痛みのセンサーが反応して痛みや重だるさを感じるようになります。関連記事:筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)

また背中や肩の緊張が長期的に続くと知らぬ前に精神状態にも影響を与えてしまします。イライラしたり、気持ちが沈み込んでしまったり、焦ってしまう、などの精神状態を作り出します。まさか肩凝りと精神状態が繋がっているとは思えない人も多いと思いますが、鍼治療などで緊張が解けた時に、その繋がりを実感する人は非常に多いのです。昔から「肩の荷が下りる」など精神的な緊張と肩を繋げるような言葉がありますよね。

肩こりの場所を患者さんが明確に特定できている場合と、どこが痛いのかよくわからないけれど肩や肩甲骨、背中周り全体が痛いという方もおられます。

実は首・肩・背中といのは感覚が手のひらなどに比べて鈍感です。ですのである一点に問題があっても、それが具体的にどのあたりなのかを感じにくい場所なのです。特に後で述べるような深層の筋肉に問題がある場合はほとんど場所がわからないと思います。

肩こりもひどくなると、緊張した筋肉によって肩の感覚を司る神経が圧迫されて全く痛みを感じていない方もたくさんいるのです。これは男性に特に多く、奥様が心配して治療に連れてきたことがあります。

※ちなみに江戸時代までは肩が張ると表現しました。「肩が凝る」という表現は夏目漱石の造語だと言われています。前期三部作『門』の中で「指で押してみると、首と肩の継ぎ目の少し背中へと寄った局部が、石のように凝っていた。」というくだりが最初です。

肩こりの原因・種類

肩こりの原因はいくつかの複合的な原因が考えられます。まず精神的な緊張より交感神経優位状態となりそれに伴う筋トーヌス(筋肉を緊張させる為に脳から発せられるインパルス)の上昇です(筋緊張)。そして過度な筋緊張により肩に向かう血管が圧迫されて筋肉が酸素欠乏をとなりさらに筋肉は硬くなります。さらに交感神経優位になることで骨格筋の血管が細くなり筋肉が酸素欠乏を引き起こすことによります。関連記事:自律神経とは?

通常患者さんが「肩が凝った」という場合に変化を起こしている筋肉は下記に挙げるものがほとんでです。多くの場合下記の筋肉の複数が緊張して肩や背中に痛みや不快感を起こしています。

これらの筋肉が緊張することにより、緊張している筋肉そのものや、それとは離れた部分に痛みを放散することがあります。よってしばしば痛みを訴えておられる場所とその原因になっている場所が違うことがあります。これはトリガーポイントと呼ばれています。

以下に、肩凝りとして知覚する筋肉を挙げていきたいと思います。(出典:3D4medical)

人の筋肉は浅層・中層・深層と深さを持ったものになります。浅層から順に深層へと紹介してきます。

◎僧帽筋(上部繊維)の緊張

僧帽筋は頭蓋骨や肩、背中を薄く覆う最も表層の筋肉になります。なので体表から容易に触ることができます。肩凝りが僧帽筋の筋緊張である場合もしばしば見られ、特に上部の繊維の筋緊張はわかりやすい不快感として感じられると思います。肩をすくめるような動きに使われます。ただ肩をすくめるような動作に心当たりがない方も多いと思います。これは精神的な興奮・緊張でこの筋肉が強張ることが多いので、結果として少しすくめたようになります。つまりここが緊張するということは微妙に肩をすくめたような姿勢が四六時中起きているということになります。緊張が常態化してしまっている方はそのことに気づかなかくなってしまいます。

◎棘下筋の緊張

こちらも浅層の筋肉になります。肩甲骨の表面と腕の上部を繋いでいる筋肉になります。肩甲骨の筋肉が肩凝りと関係あるの?と思った方もいるかもしれません。実はこれが前述したトリガーポイントというもので、ここの筋肉の緊張が背中や肩の一帯に違和感や不快感として知覚されることが頻繁にあるのです。これを放散痛と言います。日々臨床をしていて肩凝りを訴える方で、ここの筋肉に問題がある方は多く見られます。ちなみに棘下筋や棘上筋は五十肩とも深く関係する筋肉として知られています。(関連記事:五十肩(肩関節周囲炎)と針治療(藤沢市・40代後半・女性)

◎棘上筋の緊張

これは僧帽筋(上部繊維)の下にある筋肉であるため、手で触ることは難しいと思います。図を見てもわかるように腕の骨の上部と繋がっていて、腕を挙げたりする時に頻繁に使っている筋肉になります。この筋肉が緊張を肩凝りと感じることもあります。また前述したように五十肩とも深い関係のある筋肉になります。

◎肩甲挙筋の緊張

中層の筋肉です。この図ではわかりにくいかもしれませんが、肩甲骨の上部と首の骨を繋いでいる筋肉になります。僧帽筋(上部繊維)同様に肩をすくめたりするような動作に使われます。ただ僧帽筋の項目でも述べたように精神的な緊張によって自然にこの筋肉に力が入ってしまって緊張が状態化してしまうことが多いです。こちらはあまり馴染みのない筋肉かもしれませんが、臨床上頻繁にこの筋肉の緊張を触知することが多いです。

◎菱形筋の緊張

中層の筋肉です。肩甲骨と肩甲骨の間(肩甲間部)に違和感を訴えるタイプの肩凝りの場合に緊張していることが多いです。

◎上後鋸筋の緊張

中層の筋肉になります。頚椎や胸椎などの背骨と肋骨を結ぶ筋肉です。この筋肉は呼吸、主に吸気を助ける筋肉として働いています。つまりこの筋肉が過緊張してしまって動けなくなってしまうと呼吸が浅くなってしまい、うまく酸素を体内に取り込めない原因になります。もちろんこの筋肉だけが呼吸を浅くしてしまっている原因ではないのですが、頚部の筋肉なども関連して呼吸に大きな影響を与えている場合があります。

よく呼吸が重要だということで深呼吸のトレーニングや瞑想などをされている方を見かけますが、まずは呼吸やそれを補助する筋肉の緊張を取らなくては正しい呼吸をすることは難しいと思います。おそらく呼吸法を実践している方はそのことをなんとなく体感しているのではないでしょうか?なかなか呼吸がうまくできない方はご相談ください。呼吸補助筋レベルから呼吸の改善をさせていただきます。

◎頚板上筋の緊張

深層の筋肉です。この筋肉は図のように背骨の上部から頚部(首)を繋いでいます。つまりこの筋肉が緊張している時には肩凝りと同時に首こりも感じている場合が多いです。首こりに関しては後述します。この筋肉は肩凝りだけでなく寝違えの時にも異常緊張していることを多く見かけます。緊張して反対側へ首を回す障害になるのです。

関連記事:寝違え(藤沢市辻堂・男性・30代後半)

◎最長筋(左)・腸肋筋(右)の緊張

深層の筋肉です。骨盤の骨から連なる非常に長い筋肉になります。この筋肉の上部が緊張していると肩凝りとして感じることもあります。ただこのそんなに多くはないと思います。

◎半棘筋の緊張

深層の筋肉です。こちらも一般の方はあまり意識することがない筋肉だと思いますが、背中の痛みや肩凝りを訴える方でこの筋肉が緊張しているケースは結構あります。こちらもこの部分だけでなく肩甲骨周り一帯に不快感を放散している場合が多くあります。

関連記事:背中の痛み(藤沢市・40代前半・男性)

◎多裂筋の緊張

深層の筋肉です。こちらの筋肉の緊張によっても首、肩、背中の緊張と不快感として現れるケースが多くあります。深層の筋肉は手で触ることはほぼ不可能なのでマッサージなどは全く効果がないばかりか、揉み返しの原因になりますのでご注意ください。

◎小胸筋(肩凝り姿勢を起こす筋肉)

この筋肉は胸から肩の内側につく筋肉です。これ自体が緊張しても肩凝りになるわけではありません。ただこの筋肉が緊張してしまうことで肩が前に引っ張られるのはイメージがわくと思います。肩甲骨の前側の突起に付着する筋肉なので、肩甲骨を背中から前側に引っ張ってしまいます。そうなると既にご説明した僧帽筋や菱形筋、肩甲挙筋などを引っ張り、背中の肩や背中の緊張を高めてしまうわけです。また前かがみ姿勢(円背、猫背)になることで頭も前側に倒れてしまいます。それによって首こりも同時に引き起こします。肩が前側に周り込んでいる方はこの筋肉を触診してみて圧痛(押して痛みがある)があるかどうか確かめてみてください。この筋肉は胸と肩の間の深部にあります。

基本的に現代人はこの筋肉が緊張しやすい姿勢になることが多いです。特にデスクワークをされる方はキーボードを打つ姿勢がまさにこの筋肉を恒常的に短縮・緊張させる直接の原因になります。

◎実は首の凝りである場合

これまでの筋肉の中にも首と繋がっている筋肉が多く存在するのがわかったと多います。つまり肩こりとは単純に肩だけの筋肉が緊張していることの方が少なく、その多くは首の深層筋の緊張(首こり)とも密接に関連しています。首の深層筋とは主に後頭下筋群です。また肩の部分の筋肉の緊張が首の筋肉の緊張による神経の圧迫によって引き起こされているケースも非常に多くあります。詳しくは以下の関連記事をお読みください。

関連記事:首こりの鍼灸治療

肩こりの治療・治し方

冒頭で申し上げた通り、肩こり、首こり、背中のこりには鍼灸が最もよく効きます。

確かにマッサージも浅層の筋肉の緊張(こり)でなおかつ軽度なものであればそこそこ効くとは思います。しかし何度も緊張や痛みが戻ってくる肩こりや、深い層の筋肉のこり、筋肉の硬さが非常に強いようなケースではマッサージは無効どころか、悪影響すらあります。私はマッサージの国家資格も持っていますので、もしマッサージで根本的に肩こりが取れるのであればマッサージをします。そでも私がマッサージをしないのはその場かぎりの効果しか出せないからです。もちろん肩こりを本質的に再発しないためには、姿勢や精神的ストレスの除去というテーマを重要な要素になってきますが。

マッサージは確かにその時は気持ちいいかもしれません。でもその当日や翌日に緊張がぶり返したり、倍増して戻ってきたりすることがあります。またマッサージをしても2、3日で症状が元に戻って来てまたすぐにマッサージを受けに行かなければいけない状態になっている人が非常に多いと感じます。特に強いマッサージは禁忌です。

首や肩の筋肉は繊維が非常に細いため、強いマッサージで筋繊維が微細に断裂してしまうのです。そしてそれを防御するために筋肉はより硬く、緊張度を高めて戻って来ます。

これの繰り返しをしていくうちに肩凝りはどんどん重症化していきます。

私は肩こりには針治療を実践しています。針にも対症両方的なものと、根本治療があり、その双方を組み合わせています。

◎対症療法的な針治療

まず対症療法的な治療として痛みの局所や前述した痛みを起こしている元になっている筋肉のコリ(硬結、トリガーポイント)に直接細い針を刺します。筋肉としては図で説明したような筋肉がほとんどになります。その筋肉であればどこでも言い訳ではありません。効くポイントがあります。それは筋と腱の移行部になります。(筋肉は骨の付着部付近では腱という白い硬めの組織に変化しています)

筋腱移行部には腱受容器と呼ばれるものが多く存在します。腱受容器は緊張度合いを感じると自動的にその筋肉を弛緩させる作用を持っているのです。コリが慢性的に治らない方には腱受容器を針で刺激してこりを筋肉が緩みやすいように促します。腱受容器のある部分はつまりツボなのです。数千年前には受容器の存在はわからなかったはずなのですが、ツボと言われる部分と一致するのは非常にすごいことです。

また腱受容器を刺激するだけでなく、筋肉それ自体の緊張度が強い場所へも針を刺します。痛そうに感じるかもしれませんが、患者さんの多くは「そこだ!笑」というような表現をされることが多く、痛みというよりズーンとした響きを感じます。

これをするだけで肩凝りの不快な症状のほとんどは取れることが多いです。ただ緊張の原因をもう一段階さかのぼってアプローチすることでその効果をより高めて行きます。

◎根本治療的な針治療

前述した局所治療をした上で、根本的な針治療を施し効果をさらに高めて行きます。また再発しにくい体にしていきます。さてどうするのでしょうか?

「肩こりの原因・種類」の節では肩こりの原因が精神的な緊張やストレスで交感神経が優位になってしまうことだと説明しました。交感神経優位によって、首肩の血管が細くなってしまったり、筋のトーヌス(筋肉を緊張させる脳からの電気信号の強さ)が上がってしまい肩凝りを起こしてしまうのです。つまり交感神経を少し沈静化させればいいわけです。

それをするために必要なのが咬筋、側頭筋、外側翼突筋などの咀嚼筋(噛む筋肉)への刺鍼や頭部への刺鍼になります。

人間はもともと動物なので興奮すると噛む筋肉の緊張度が上がります。そして噛む筋肉の緊張が慢性化するとその緊張した情報が三叉神経を介して脳幹へと送られ続けてしまい、さらに脳は落ち着きを取り戻せなくなってしまうのです。そうなると交感神経が上がりっぱなしになってしまい、肩凝りは治りにくくなるわけです。また頭部の筋肉にしても同じことが言えます。頭部は場所にって導出静脈という頭蓋骨の内外を交通する静脈の開口部(ツボ:百会)がありその近くを刺鍼することで脳(前頭前野)の血液循環が改善されます。前頭前野は気持ちの緊張をコントロールする上では非常に重要な部分です。また頚部(首)の筋肉に刺鍼することによって脳へ向かう動脈の圧迫を解除し血液循環を改善します。結果として脳はリラックスすることができるのです。

※2018年に放送されたNHKの番組「東洋医学ホントのチカラ」においても百会に鍼治療を施すことで前頭前野の血流があがることが述べられていました。

※2019年2月13日放送のためしてガッテンでも首こりと肩こりの関係が放送されるようです。

ツボで言えば咀嚼筋に関しては

上関(じょうかん)、下関(きゃくしゅじん)、頷厭(がんえん)、懸顱(けんろ)、懸釐(懸厘)(けんり)、曲鬢(きょくびん)、率谷(そっこく)、頬車(きょうしゃ)、太陽などです。

頭部のツボは

脳戸(のうこ)、 強間(きょうかん)、後頂(ごちょう)、百会(ひゃくえ)、上星(じょうせい)、神庭(しんてい)、曲差(きょくさ)、頭臨泣(あたまりんきゅう)などになります。

頚部のツボは

安眠穴(あんみんけつ)、完骨(かんこつ)、風池(ふうち)、天柱(てんちゅう)、百労(ひゃくろう)です。

これらのツボを全て刺針するわけではなく、その人その人の体質、病証(東洋医学的なタイプ)や体の反応に合わせて選穴して治療していくのです。

そうすることで、肩凝りが起こりにくい体を目指していきます。

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