線維筋痛症(FMS,FM)

線維筋痛症が病院で治らなくても諦めないでください。

※関連記事:線維筋痛症の患者さん(鎌倉・40代前半・女性)線維筋痛症と針治療(藤沢・40代・女性)

目次

1.線維筋痛症(FMS,FM)について

2.線維筋痛症の症状

3.線維筋痛症状の原因

4.線維筋痛症の診断基準

5.線維筋痛症と鍼灸治療

6.線維筋痛症の改善例・完治例

7.線維筋痛症治療のエビデンス

8.線維筋痛症の名医

9.その他リンク

線維筋痛症(FMS,FM)について

線維筋痛症は現代では「難病」として位置づけられています。原因として中枢感作症候群(ワインドアップ現象→関連記事へ)というものが関係していると言われることもあり、私もそのように考えています。鍼灸臨床をする中で患者さんに共通する傾向として強いストレスにさらされて当初は筋筋膜性疼痛症候群(MPS、筋肉の痛み)だったものが発症の引き金になって痛みが増強していくことが多いように思います。その症状は多彩で自律神経症状のような多彩な愁訴を呈することが多いです。しかし病院でMRI、レントゲン、血液検査などの検査をしても全く異常が見られません。つまり関節リウマチや炎症反応も全くみられないのです。病院に行って診察を受けても決定的な異常がなく患者さんとしてはどうしていいのかわからない状態になってしまいます。その状態自体が強い精神的ストレスでもあります。そのため患者さんが東洋医学を受診する頃には発症から数年が経過していることも多いようです。結論から申し上げると線維筋痛症に鍼灸治療が適用すると感じます。ただ単純に鍼灸と言っても線維筋痛症を治すための経穴(ツボ)や方法を知らないと厳しいと思います。かくいう私も同じような症状に悩まされたことがあり、自身の鍼灸治療で治した経験があります。西洋医学的には難病として扱われていても、東洋医学的な生体観や治療を施すことで治る病気は本当に多いと感じます。身近な話で肩こりは病院では治せませんが、鍼灸なら一回で治ることがほとんどです。線維筋痛症は一回で治るとは言えませんが、複数回の治療で改善することが多いと感じます。

※慢性疲労症候群(CFS)は線維筋痛症と非常に近い疾患とされていて、発症プロセスは同じであるが筋の痛みによる影響が全身の疲労感として出ているものを言います。

線維筋痛症の症状

線維筋痛症の症状は自律神経失調症の用に多彩ではあるが、大別して下記のように身体中に痛みが出る骨格筋の症状とそれ以外の症状に分けることができます。

(1)骨格筋の症状

広範囲の筋肉痛、関節痛、関節のこわばり

(2)骨格筋以外の症状(自律神経症状) 

精神神経症状(84%):睡眠障害(不眠)、不安、焦り、頭痛、抑うつ状態、うつ病、理由もなく落ち着かない、理由もなく怖い、驚きやすい

胃腸症状(70%):下痢、便秘、食欲不振、吐き気

全身症状:全身倦怠感、微熱、喉の閉塞感、物音に過敏に反応する、

※かっこ内の%は患者さん全体の中でその症状を呈する割合です。

◯重症度分類(ステージ)※厚労省試案

ステージ118カ所の圧痛点のうち11カ所以上に痛みはあるが日常生活に重大な影響を及ぼさない。※圧痛点は、下記線維筋痛症の診断基準参照。
ステージ2手足の指など末端部にも痛みが広がり、不眠、不安、抑うつがあり日常生活に障害。
ステージ3激しい痛みが続き、軽い皮膚・髪などへの刺激、温度・湿度変化などの軽微な刺激でも激痛を生じる。自力での生活は困難。
ステージ4激痛で自力で体を動かせない。ほとんど寝たきり状態。自分の体重による痛みで、長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない。
ステージ5激痛とともに意識障害、目の乾燥、尿路感染、直腸障害などの全身症状が出て、日常生活は完全に不可能。

線維筋痛症と診断されていなくても実際の患者はかなりいると言われていて日本で200万人いると言われています。ただ、その多くはステージ1か2の患者さんが多いと思います。

線維筋痛症の原因

「線維筋痛症の原因はわかっていない」これはどこの情報サイトにも書かれていることだと思います。「何らかの原因」によって脳の痛みを完治するセンサーが異常興奮しているのに、痛みを抑制する機能(下行性痛覚抑制系)が働かず、またこの病気自体による精神的なストレスによって痛みが増幅されるプロセスがあります。

ただ「何らかの原因」にはいくつかのパターンがあるとおもいます。外科手術、外傷(交通事故)、細菌・ウィルス感染、予防接種、筋肉の慢性的な緊張、顎関節の噛み合わせ、など。その中で私が鍼灸治療をしていて、顎の中の筋肉(外側翼突筋)の興奮が脳の痛みを完治するセンサーを興奮させているとする説は非常に納得感があります。患者さんの外側翼突筋部(経穴:上関、聴宮)を針治療することによって改善する例があるからです。

また外側翼突筋に限らず、脊柱の際の深層を走る筋肉の緊張によっても脳の異常興奮は起きる可能性があると考えています。線維筋痛症を広範囲に出現した筋膜性疼痛と指摘する医師もいます。

私は少なくとも顎関節や筋膜性疼痛由来の線維筋痛症は改善すると考えています。もちろんその他のタイプにも効いている事例があります。

線維筋痛症の診断基準

米国リウマチ学会の線維筋痛症の診断基準は下記のようになっている。

(1)全身広範囲の持続する疼痛(痛み)が3ヶ月以上続いている。

(2)下図のような18カ所の部位の中で、指で押した際に痛みを生じる部分が11カ所以上あること。

・下部頸椎(首の下部) ・僧帽筋上部(両肩の中央あたり)

・棘下筋部位(肩甲骨の上にある筋肉) ・第2肋骨部位(鎖骨中央の下方)

・上腕骨内顆 (肘関節内側の出っ張っている部分)

・臀筋部位(お尻の筋肉) ・大転子部位(大腿骨の上部)

・膝関節部位 ・後頭部位(頭と首の境目あたり)

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実際の鍼灸の臨床においても線維筋痛症の診断はされていないものの、これらの症状を満たす患者さんがたまにおられます。ちなみに上記の18の部位は全て鍼灸の重要な経穴(ツボ)の位置と一致します。そして鍼灸治療で著効を示すことがほとんどです。

線維筋痛症と鍼灸治療

線維筋痛症に鍼灸治療は大変よく効きます。

私は西洋医学的な身体の見方(解剖学・生理学・病理学など)も重視しておりますが、この疾患に関しては東洋医学と現代医学の両方の生体観を適用することが患者さんの症状を改善するのに役立つと考えています。

まず骨格筋の症状については診断基準で述べた通り、18の圧痛部位は鍼灸治療をする上で非常に重要な経穴(ツボ)と一致するのです。また東洋医学的にこのような病は「経筋病」と位置付けられており、体にある12の経筋ラインのうち太陽経筋と言われるラインに症状が出ていることがほとんどです。そしてそこが鍼灸の治療点となりなります。また骨格筋以外の症状については、痛みやそれに伴う社会的な不安などの精神的ストレスが胃腸や脳に影響しています。その状態を東洋医学的には「肝気犯脾胃」「肝気鬱結」という表現をします。この症状に関しては足や手、頭などの症状が出ている部分とは離れたところに治療点を取って治療を施していくことになります。

また上記のような東洋医学的なものとは別に現代医学的な観点からはトリガーポイント療法という鍼治療を行います。線維筋痛症の診断に用いられる18の圧痛部位というのはトリガーポイント療法における痛みを引き起こす部位と一致しているのです。

そして線維筋痛症の骨格筋以外の症状に関しては、患者さんの病態によってはお灸(少し熱め)による治療も効果があると考えています。特に背部のツボへの間接的なお灸(直接熱さが伝わらないお灸)は乱れた自律神経系を調整することになり心身を平穏な状態へと促すことができると感じています。

線維筋痛症に鍼灸治療が効くことは一部の整形外科医も認めているようです。そして線維筋痛症学会が発行している『線維筋痛症診療ガイドライン』では鍼治療が推奨度B(実施するよう奨められる)とされています。これは一部の投薬治療以上の評価となります。線維筋痛症に鍼灸が効くことを一人でも多くの患者さんに知っていただいて毎日の痛みが軽減することを願っています。

線維筋痛症の改善例・完治例

線維筋痛症の症例についてです。多くの線維筋痛症の患者さんを改善させている自負はありますが、100%の患者さんを完治できたわけではありません。ただほとんどの人は改善を実感し、普通に生活を送れるようになっています。

ただ、ごくまれに針の効かない患者さんがおられます。それは2つの理由が考えられます。1つ目は、線維筋痛症という診断を受けた人の中に針治療が効くタイプの病態と効かないタイプの病態が存在するように思えるのです。前述したように線維筋痛症の診断基準というのは決して明確なものではありません。これは私の推測の域を出ないのですが、線維筋痛症の中には痛みを伴う別の病気の患者さんが存在していると思うのです。もちろんその病気もまだ病名として定義されていないものだと思います。2つ目は患者さんのステージです。ステージが5までいってしまうと治りにくくなるか、治るまでに時間がかかるケースが多いと思います。もちろん改善するかしないかは個人個人全く違ってきますので明確に断言することはできません。

ただ色々な治療がある中で鍼灸治療は線維筋痛症の専門医でも推奨することがあります。私の患者さんの中にもそのような方がいらっしゃいました。そのような専門医の先生は投薬治療だけでこの病気が治らないことをよく理解されているんだと思います。

以下に2例ほど症例の記事を挙げます。

(1)線維筋痛症(FMS,FM)の患者さん(鎌倉市・40代前半・女性)

(2)線維筋痛症の針治療(藤沢市・40代半ば・女性)

線維筋痛症治療のエビデンス(医学的根拠)

医学のエビデンス(システマティックレビュー)に関しても最も信頼性の高いデータベースはコクランライブラリーと呼ばれるものです。つまりこのデータベースに掲載されたものであれば医学的に信頼性の高いものであると言うことができます。この中で線維筋痛症には鍼治療が有効であるとされています。コクランライブラリーに鍼灸が線維筋痛症が有効であることが掲載されていることを知っている日本の整形外科やリウマチ科のドクターがどれほどいるでしょうか?そもそも線維筋痛症に対する理解もままならないとは思います。

コクランライブラリーに掲載されたものに限らず、世界には鍼灸が線維筋痛症に有効性があることを示した論文は非常に多く存在します。医師であれば誰でも知っている医学論文データベースとして「pubmed」(アメリカ国立衛生研究所)というものがあります。このデータベースで「acupuncture(鍼灸) 、fibromyalgia(線維筋痛症)」のキーワードで検索すると175件の医学論文が出てきます。

その中で線維筋痛症に対して有効性を示したものを紹介します。

The effects of acupuncture versus sham acupuncture in the treatment of fibromyalgia: a randomized controlled clinical trial.「線維筋痛症の治療における鍼治療と偽鍼治療の効果:ランダム化比較試験」

この実験は偽鍼と本物の鍼を用いてランダム化比較試験を行ってものですが、鍼治療が線維筋痛症に対して有効であることを示しています。

線維筋痛症の名医

私が知る中で線維筋痛症の名医と言える方がいるとしたら、高知県の西田順天堂内科の西田皓一先生です。この先生は西洋医学のドクターでありながら線維筋痛症には針治療を行って、高い効果を出しているようです。鍼灸治療にも無数の流派があるのですが、経筋治療という方法が線維筋痛症には有効です。私も線維筋痛症の患者さんには経筋治療で対応して効果を出しています。

西田順天堂内科web:http://www.k-nishida.rgr.jp/

その他リンク

◯線維筋痛症友の会

線維筋痛症が慢性化してくると社会からも離れなくてはいけなくなったり、症状や気持ちを共有できる人も限られてきます。孤独になりますよね。そういう意味でこういうサイトを参考にして地域のリハビリ講習会やワークショップなどに参加したり、メルマガを購読しているのは価値があることだと思います。ぜひ見てみてください。

http://www.jfsa.or.jp/

◯リウマチ情報センター(線維筋痛症)

こちらのサイトで一般的な線維筋痛症の説明がなされています。ただ説明には多少疑問が残ります。代替医療よりも薬物治療のほうが有効性があると書いてあるのですが、私の経験からは全く逆です。薬物療法で症状は少し軽減することもあるとは思うのですが、線維筋痛症の随伴症状も含めて完治している例を私は見たことがありません。もちろん鍼灸などの代替医療だけで治らないタイプの線維筋痛症があることも確かだとは思います。今後はどのタイプにどの治療が合うかどうかを見極めることが医療者として大切だと考えています。

http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm120/kouza/senikintsu.html

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【免責事項】

こちらに掲載された事例、体験談は患者様個人の治療成果や感想であって、万人への治療効果を保証するものでないことをご理解ください。治療による効果には個人差があります。