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胸郭出口症候群に鍼灸は非常に効きます。
患者
疾患名:胸郭出口症候群
年齢・性別:50代前半・女性
住まい:藤沢市
職業:主婦
主訴・症状
(1)右頸部(首)の奥の筋緊張、鈍痛、鎖骨付近の鈍痛としびれ
(2)肩後面、右腕外側、親指、人差し指を中心にした焼けつくような痛みとしびれ ※腕全体の過度の筋緊張を伴う。
(3)睡眠障害(入眠困難・中途覚醒)、頭痛、眼精疲労
発症の経過
患者さんは朝起きたときに右頸部と右手全体に違和感を感じていたようです。寝違えだと思ってそのままにしていたところ、昼になる頃には首が痛くて動かせず、鎖骨、肩、右手全体が焼け付くように痛くなりました。
日頃から重い首コリや肩こり、背中の緊張と痛み等に悩まされていたようです。ただコリ自体は若い頃からの症状であったためマッサージなどの対処療法をすることでやり過ごしていたようです。
この患者さんの前提として、50代になったあたりから入眠がスムーズではなくなってきたため睡眠導入剤を服用するようになっていたのです。その日の身体の状態によっては睡眠導入剤が効きすぎてしまうと睡眠が深すぎるためか寝返りもほとんど打たないぐらいに眠りこんでしまい、次の日のお昼ぐらいまではボーっとしてしまうほどだったようです。そんな中で胸郭出口症候群を発症しました。眠り始めは仰向だそうですが、睡眠中に左を下にした横向きになることが多いようです。寝起きの状態を詳しくヒアリングしたところ睡眠初期に寝返りをした際に枕から頭が外れたところに位置していたことで首が布団側に不自然に曲がった状態で眠り続けた可能性が高いことがわかりました。日頃から首の奥の筋肉(前・中斜角筋)などが緊張気味であったこともあり、その体勢で寝続けたことで、さらに筋緊張が高まったことと筋肉(前斜角筋)と筋肉(中斜角筋)によって首から手に連なる腕神経叢(わんしんけいそう)が挟まれ圧迫されたことで首の痛みと手のしびれを中心とした症状が全て出てしまったと思われました。
整形外科では胸郭出口症候群という診断を受けて痛み止めを処方されるもほとんど効かない状態だったようです。また症状に合わない整体などを受けて若干悪化していました。今までに感じたことのない激痛が何週間も続き、恐怖と不安も持っておられました。そして発症から1ヶ月ほど経った頃に当院にご連絡いただきました。
胸郭出口症候群の原因
そもそも胸郭出口症候群とは臨床上3つのパターン(下図参照)があります。斜角筋症候群、小胸筋症候群、肋鎖症候群です。難しい名前のように見えますが、起きていることは非常に単純です。まず手につながる運動神経や感覚神経は上部頸椎から出てきて首の深部筋肉、鎖骨付近を通って、腕や手先へと連なっていきます。その一連のライン上で骨や筋肉の間を縫って通過してくるのですが、3つの部分で狭い通り道が存在します。その部分が何らかの原因によって狭められてしまった時に神経が締め付けられ、運動障害(筋肉の緊張)や感覚障害(痛みやしびれ)が起こってくるのです。この際、痛みの感覚も通常以上に過敏になっていることが多く、ちょっとした首の動きで激痛が走ったりします。あまりの痛みに恐怖や不安を感じる患者さんも非常に多いです。ただしこの症状は適切な治療をすれば改善します。
この患者さんの場合はもともと首の深部にコリを抱えていたことで神経の通り道が細くなっていたことが考えられます。また深い睡眠で横向きのまま固定されて眠ってしまって寝返りもほとんど打てないような状態であったことから神経が長時間圧迫されたままになっていたのだと考えられました。
実際に胸郭出口症候群の発症は朝起きたときが圧倒的に多いです。そして深酒や睡眠導入剤などを飲んだことで変な体位で深く眠りこんでしまったときに起きることも多いと思います。もちろん普通に眠って起きて発症することもありますが。
患者さんのタイプは上記3タイプの中の「斜角筋症候群」です。首の横(中層)にある前斜角筋と中斜角筋によって神経が圧迫されてしまったのです。また触診していてわかったことなのですが、首の付け根(頭蓋骨と首の境目)あたりを軽く押すと肩や手に痛みが放散するポイントがありました。これは胸郭出口症候群とは別な症状でトリガーポイントと呼ばれています。ある筋肉の緊張部分を指圧するとその部分とは離れた場所に痛みが広がる状態があるのです。決して珍しいことではなくしっかりと触診をしているとしばしばみられます。
胸郭出口症候群の治療・予防
この患者さんの課題は頸部深層筋(首の奥の筋肉)、首の横の筋肉(斜角筋群)の異常な緊張があることで神経を圧迫し続けてしまうことが問題になりました。また日頃から首の奥の筋肉が緊張していることにより上部の頸椎が緊張した筋肉に引っ張られることでズレを生じいることで肩や腕の筋肉の緊張を起こしやすい状態であることです。
胸郭出口症候群の患者さんが来院されたときの治療手段は針治療と補助的な頸部のマッサージです。以前の記事でも書いたように筋肉の過緊張を取る手段として針治療は格段に優れているのです。マッサージや整体とは筋肉を緩めるプロセスが全く違います。(関連記事:なぜ針治療でコリがほぐれるのか?)
まずは問題となっている頸部深層筋、斜角筋部に針でアプローチします。頸部深層筋が体表から3cmほど深いところにあり、手で触ろうにも届かないということは以前の記事でも書きました。(関連記事:首の痛みと手のしびれ(藤沢・30代前半・男性))
そのため針で治療することが必要になります。痛みに過敏になっているため針を刺した瞬間はすこしチクっとした痛みがあるかもしれませんが症状の痛みとは比べ物にならないと思います。また過緊張の筋肉が鍼灸治療でゆるんだら、仰向けの状態で首をソフトにマッサージしながら頸椎の微細なズレをもとに戻していきます。この際、筋肉が緩んだ状態であれば軽いマッサージをすることで自然に頸椎は元通りの状態に戻っていくことが多いと思います。
初診の治療の次の日の段階で当初存在した痛みが10だとすると6ぐらいまで落ち着いたようです。針は即日効果を発揮することもありますが、この患者さんのように次の日の朝に顕著な効果を感じることも非常に多いです。それは治療後に筋肉がゆるんだことで寝ている間に徐々に痛みを起こしていた部分の過敏性が落ち着いてきたり、痛みの原因物質(発痛物質)が改善された血流で流されるからだと思われます。
初めの1ヶ月は週に1度ご来院いただきました。4回程度の施術で痛みの度合いが10から2程度にまで改善されていたので、その後は2週間に1回ぐらいの治療を続けてほぼ気にならない程度まで改善することができました。それに伴い頭痛や睡眠障害もほとんどなくなったようです。もともと首や肩のコリ、背中の緊張と痛みに悩まされていて、そのことが今回の発症の根本原因であったので、その治療は月1回程度で継続することになりました。今回のように大きな痛みに至る前に身体の状態を改善しておくことは、予防としての意味合いも持ちます。ある意味で東洋医学の「未病を治す」ことに近い考え方です。
ご経験された方ならわかると思いますが首や手の痛み・しびれというのは恐怖を覚えるほど痛いものです。痛みのあまり眠れない方や精神的に抑うつ状態になってしまう方も多くおられます。
ですので首や手の痛みやしびれを発症して整形外科やペインクリニックで改善しない場合にはぜひご来院いただきたいです。人によって治るまでの期間に個人差がありますが、しっかりとした知識に基づいて鍼灸治療をすれば、その多くは改善していきます。
【免責事項】
こちらに掲載された事例、体験談は患者様個人の治療成果や感想であって、万人への治療効果を保証するものでないことをご理解ください。治療による効果には個人差があります。