坐骨神経痛(Sciatica)

関連記事:坐骨神経痛の患者さん(藤沢市・50代前半)坐骨神経痛の患者さん(葉山町・70代半ば)坐骨神経痛は整体で治るのか?

坐骨神経痛は適切な鍼灸治療をすれば治ります。

目次

1.坐骨神経痛の症状

2.坐骨神経痛の原因

3.坐骨神経痛の治療・治し方

4.坐骨神経痛改善のためのストレッチ

5.坐骨神経痛の改善例・完治例

6.坐骨神経痛と似た疾患(小臀筋トリガーポイント)

7.坐骨神経痛と東洋医学

8.坐骨神経痛の鍼灸治療に関するエビデンス

坐骨神経痛の概要・症状

坐骨神経痛とはなんでしょうか?そもそも坐骨神経は腰部の骨の間から出た束の神経であり、足の後面(太ももの裏側)を通ってふくらはぎやすねの方まで伸びる神経の事を言います。その神経の通り道で、硬くなった筋肉やヘルニアなどの圧迫を受けることで圧迫を受けた部位やその神経の走行上に痛みやしびれを発するものです。痛みやしびれの発生する順序としては、まず腰部や臀部(お尻)に慢性的な痛みや違和感の発生します。その後で太ももやスネ、足の甲に症状が波及していくことが多いように思います。もちろん腰部・臀部・足が同時にしびれることもあります。痛みの強まる時間帯で多いのは早朝の起床時です。

私も多くの坐骨神経痛の診断を受けた患者さんを治療してきました。そして坐骨神経痛と診断された方の多くは「梨状筋症候群」という病態の方が多く、その場合特に針治療で完治することがほとんどです。ちなみに坐骨神経というのは人体の神経の中で最も太い神経です。そして生理学上、神経というのは太ければ太いほど圧迫による障害を起こしやすいという性質を持っています。わかりやすい例で言えば、数十分正座を続けただけで足全体にしびれや感覚麻痺を引き起こしたことはないでしょうか?坐骨神経痛の発症プロセスと非常に似通ったものです。

坐骨神経痛の原因

坐骨神経痛の原因は骨か筋肉が坐骨神経を圧迫することで起こるので、原因としてはいくつか考えられるわけです。私が治療してきた中で、病態として一番多いと感じるのは梨状筋症候群(非根性坐骨神経痛)です。梨状筋とはお尻のほぼ中央部にあります。そして坐骨神経は骨盤の中から梨状筋の下や梨状筋そのものを通って出てくるのです。そして梨状筋という筋肉は非常に過緊張(コリ)を発生しやすい筋肉としても知られています。よって過緊張を起こした梨状筋によって坐骨神経が過度の圧迫を受けて圧迫部位やその神経が近くを支配している足全体に痛みやしびれを発生するわけです。もし坐骨神経痛と診断された方の中で痛い方の足側のお尻の奥を親指で押してみて痛みが発生する場合は梨状筋に問題がある可能性が高いと思います。また、その場合、痛い方の足がガニ股になっていることも多いかもしれません。梨状筋が大腿骨(モモの骨)を引っ張って足を外側に回旋させてしまうからです。

その次に多いのが腰椎椎間板ヘルニア(根性坐骨神経痛)です。これは腰椎と腰椎をつなぐ椎間板の中からゼリー状の組織漏れ出して腰部において坐骨神経の上流となる神経を圧迫することで起きます。この場合、腰自体にもともと鈍痛や慢性痛を抱えている方が多いと思います。また腰椎椎間板ヘルニアの患者さんで特徴的なのは足の裏のへこんでいるエリアの一番親指に近い部分に硬結(コリ)が存在することです。このコリが発生する理由ははっきりとはわからないのですが、そこにコリがある方は非常に多いように感じます。そして3つ目に多いのがご老人で骨粗鬆症の方です。これは骨粗鬆症で腰部の骨がもろくなりつぶれてきます。そしてつぶれて曲がった腰の骨は腰神経(坐骨神経の上流)を圧迫するのです。このタイプの患者さんは痛くない方に上半身を曲げると症状が改善することが多いようです。

坐骨神経痛の治療・治し方

整形外科などで坐骨神経痛と診断された患者さんを多くみてきました。その方々の多くはほとんど治らず慢性化してあきらめてしまっています。そして整骨院、リラクゼーション、整体などで揉んでもらうことでその時だけ少し改善させることを繰り返しています。その時は良くなるのですが、すぐに腰や足の痛みやしびれが戻ってきてしまいます。私はカイロプラクティックや整体、マッサージなどいろいろな治療方法で坐骨神経痛の治療にあたってきましたが、最も効果が高いのは鍼灸(針)治療です。ただ多くの患者さんは初めに鍼灸を選ばないことが多く、慢性化して腰部や臀部(お尻の奥)筋肉の過緊張(コリ)を起こしていてちょっとやさっとでは治らない状態に陥っています。腰部や体幹の適切なツボに鍼治療をほどこすことで多くは治っていくのです。マッサージで治る坐骨神経痛は恐らく坐骨神経痛ではありません。後述する小臀筋のトリガーポイントという坐骨神経痛と誤診されたものである可能性があります。

そしてヘルニアが原因で坐骨神経痛が起きている場合は大腰筋が異常緊張している場合が非常に多いです。つまり大腰筋が硬く短縮することで前屈みに背骨が曲がった状態になります。そして椎間板の前側がつぶされることで後ろに椎間板の髄核(ゼリー)が飛び出して神経を圧迫するのです。その大腰筋を針でゆるめます。ゆるめた後に腰を前に反る姿勢を取っていただいたり、腰に一時的に枕のようなものを入れていただいて反った状態を作ります。そうすることでヘルニア自体が引っ込むことがあります。また脊柱管狭窄症と診断された方も同じようなプロセスで症状が出ているため大腰筋の針治療で大幅に改善することがあるのです。

治療期間は週に1回の患者さんで3ヶ月程度が目安になります。ただ、人によっては数回の治療で痛みの80%ぐらいがなくなってしまう方もいるので一概には言えない部分もあります。ちなみに鍼灸治療はほとんど痛みは発生しません。針と聞くと「痛い」と連想される方が多いかもしれませんが、刺されたことすらわからないぐらいの場合もあります。(関連記事:はり治療は痛くないですか?

坐骨神経痛改善ためのストレッチ

基本的に坐骨神経痛が慢性化している状態でストレッチをしても治ることはほとんどありまっせん。むしろ悪化することもあるので慎重に試してください。かなり軽度の坐骨神経痛であったり、発症前段階の状況であれば改善することもあります。そして効く場合のタイプとしては梨状筋症候群の場合です。ヘルニアなどが原因となる坐骨神経痛にストレッチは全く効きません。筋肉だけが原因ではないからです。

前述したように梨状筋症候群は臀部の奥の筋肉(梨状筋)が緊張することによって坐骨神経を圧迫するものでした。したがって患者さんご本人にできるストレッチとしては梨状筋を伸ばすストレッチとなります。方法としてはまず足がしっかり床につく椅子に座ってください。そして痛みの出ている足首の外側(外くるぶしの上)を反対側のももの上に置いてください。椅子に座って座って片方だけあぐらをかいているような状態です。しっかりと足をももに乗せたら上半身をそのままゆっくり前屈みにして深くお辞儀をするような姿勢をとってください。そのときに痛みが出ている側の臀部に痛気持ちいい響きがあれば、それは効いている証拠です。★痛みが少しでも場合はこのストレッチをやめてください。悪化する場合もあります。下記動画のストレッチに関しても同じことが言えます。

Youtubeに梨状筋のストレッチをアップされていたる方がいたので参考までにご覧ください。この動画は椅子でのストレッチではありませんが、原理は同じです。床で行う場合はこのようなストレッチになります。※2017年3月追記。

坐骨神経痛の完治例・改善例

坐骨神経痛は患者さん個人個人で、治る期間は大きく異なってきます。それは患者さんの病態のタイプ(根性・非根性)や発症してから鍼灸治療を受けるまでの期間(慢性化した期間)によって治癒までの期間が変わってくるからです。最も治りやすいタイプは発症してから2週間以内にご来院された場合です。ただそれ以外の場合でもじっくりと治療をしていけば治ることが多いです。また一つ重要な要素として発症されて重症化された方の7割以上は発症の前に非常に強いストレスや極度の疲労を経験されている方です。そのあたりの状況も問診時に伺いながら、東洋医学的な要素もふまえて治療して行きます。

以下に当院の症例を挙げますので参考までにご覧ください。

(1)坐骨神経痛の患者さん(葉山町・70代半ば)

(2)坐骨神経痛の患者さん(藤沢市・50代前半)

 ※関連記事:坐骨神経痛は整体で治るのか?

坐骨神経痛と誤診される疾患(小臀筋トリガーポイント)

坐骨神経痛ではないのですが、坐骨神経痛と誤診されることがある疾患について説明いたします。この疾患は坐骨神経痛とほぼどうようの腰下肢症状を出すため短時間の診察によって坐骨神経痛と診断されてしまうことが多い病態です。しっかりとこの症状が把握できていれば治療自体は簡単なのですが、坐骨神経痛だと考えて治療すると全く治りません。症状は同じでも原因となる場所やプロセスが全く違うからです。

小殿筋というお尻の外側の奥にある筋肉が過緊張状態になると、坐骨神経痛のように腰部や足の後面が外側、足首に痛みやしびれを誘発することがあります。これが小臀筋トリガーポイントという状態です。

この病態は神経の圧迫とはほとんど関係がなく症状を出します。まずトリガーポイントとはある一カ所の筋肉の過緊張や硬結(こり)によって、その局所とは離れた場所に痛み(放散痛)やしびれを出す不思議な現象のことです。この現象がなぜ起きるのか解明はされていないのですが、日々臨床をしていると頻繁に遭遇する症状です。もちろんお尻の筋肉だけではなく、身体のあらゆる部分にトリガーポイントは起こります。

こりの局所と放散痛の因果関係ははっきりとしないのですが痛みの元になる緊張を針治療や特殊なマッサージなどで取ることで痛みはうそのように改善します。ですのでこの病態の場合、症状は治りやすいと言えます。

坐骨神経痛と同じような症状を呈する患者さんが来院された時には坐骨神経痛だけでなく、この病態も念頭に入れながら問診や視診、触診を詳しく行います。整形外科などではあまり詳しく触診しないのでこの病態は見逃されることが多いか、認知すらされていないと感じることがあります。

坐骨神経痛と東洋医学

この項目は中医学・東洋医学に詳しい医師や鍼灸師向けになりますが、比較的わかりやすく説明しますので、ご興味ある方はご覧ください。

まず東洋医学で坐骨神経痛は「経筋(筋肉)」の病です。そしてその経筋は足少陽経筋(足の外側)、足太陽経筋(ふくらはぎ、大腿部の裏側)、足陽明経筋(足の前側)です。経筋の病とは、つまり足の三陽経脈の気血の滞りにより、同名の経筋が異常をきたし症状を呈するのです。

2000年前の中医学古典「黄帝内経 霊枢」にはヒントになる記載があります。それは開合枢理論と言われるものです。

簡単に申し上げると足の正常な状態というのは、先に挙げた少陽(外側)・太陽(後面)・陽明(前面)の三経筋の正常な協調関係によって成り立っているとうものです。つまり治療にあたっては、原因がどれが一つの経筋上で起きていることであっても、三経筋全てを治療しなくては完全に治らないということを言っているのです。これは複数の筋肉が複雑な協調関係を持っていて立体的に機能しているという発送に基づいています。これは現代医学でも新しい考え方に属す筋膜的な発想に近いものです。2000年以上も前に既にこの基礎理論があったことは本当に驚きであり、経験医学・観察医学である東洋医学だからこその発見だったと言えると思います。

私も治療にあたっては現代医学的な鍼灸治療だけでなく、このような東洋医学的なアプローチも常に念頭に入れています。

坐骨神経痛の針治療に関するエビデンス

坐骨神経痛に鍼灸治療が有効であることは経験的にはよくわかっているのですが、念のためエビデンス(医学的根拠)についても引用文献とともに紹介します。私は研究者ではなくあくまでも臨床の人間なのでエビデンスがあってもなくても安全性があって効くと実感する治療手段はしていきたいのですが根拠があった方がなお良いですよね。その内容を別の記事で紹介しています。→坐骨神経痛の鍼灸治療に関するエビデンス

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【免責事項】

こちらに掲載された事例、体験談は患者様個人の治療成果や感想であって、万人への治療効果を保証するものでないことをご理解ください。治療による効果には個人差があります。