不眠症の鍼灸治療

睡眠薬を使わないで不眠症を根本的に改善させる。

目次

はじめに

睡眠とは何か?

睡眠障害とはどういう状況なのか?

なぜ不眠症になるのか?

不眠症の鍼灸治療

不眠症患者さんの日常的な注意事項

はじめに

当院には不眠症(入眠障害、早朝覚醒)をお持ちの方は本当に多くおられます。主訴として不眠症を訴えている方よりも、他の疾患の問診をする中で不眠症を抱えていることが判明するケースがほとんどです。例えば自律神経失調症、うつ病、不安障害、神経症、眼精疲労、首こり、肩こり、腰痛などの慢性痛などに伴って不眠症を抱えているパターンが多いと思います。その中には藤沢や茅ヶ崎の睡眠外来に通っているけれども1年以上ほとんど症状が治っていない方もいます。

私が鍼灸治療をする上で不眠症を改善することは主訴(患者さんの最も気になっている症状)を改善するためにも非常に大切なものだと考えています。理由としては非常にシンプルなもので、人間には自然治癒力が備わっているわけですが、良質な睡眠を確保することでそれが高まるからです。

不眠症に睡眠薬や向不安薬などを毎日飲んでいる方もおられます。

本当は薬に頼らずに眠れるようになりたいというのが本音ではないでしょうか?

薬による睡眠の質と人間本来のリズムによる睡眠の質には格段の差があることはご本人が一番よくご存知だと思います。

※病院などで下記のような種類の睡眠薬を処方されている方が多いように感じます。

◯西洋薬

(1)ベンゾジアゼビン系:ハルシオン、レンドルミン、リスミー、エバミール、デパス(エチゾラム)、サイレース、ロヒプノール、ネルボン、ドラール、ダルメート (2)非ベンゾシアゼピン:マイスリー(ゾルピデム)、アモバン、ルネスタ (3)メラトニン受容体作動薬:ロゼレム (4)オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ

睡眠とは何か?

睡眠についてはまだわかっていないことも多いのですが、例外を除き、基本的には疲労回復や自律神経系の調整などを含めた「自然治癒の時間」なのです。

私が日々鍼灸臨床を行う上でも自然治癒と睡眠の重要性を実感することが多いのです。治療をした後で睡眠を挟んだ後の患者さんの身体の変化の度合いは非常に大きいと感じています。もちろん患者さんの自覚も同じです。

例えばある特定の疾患を持つ患者さんに早朝治療をしたとします。そして夜の状態と次の日の朝の状態を後で教えていただくという調査を数十人から聴取したところ圧倒的に朝の状態の変化が大きかったのです。感覚的に言えば当たり前と言えば当たり前なのですが、その患者さんたちは治療なしで眠ろうとしてもなかなか眠れず、主訴(例えば自律神経失調症)は全く治らなかったのです。しかし鍼灸治療を数回実施して自然治癒力を正常に近いレベルに戻し、なおかつ睡眠を挟むことで主訴が大幅に改善するケースが非常に多いのです。

ただ、どんな睡眠でも治癒力が高まるとは感じていません。例えば特定の睡眠導入剤、睡眠薬などを使って眠っているような患者さんは寝ても寝足りないように自覚されていたり、なかなか症状が改善しない場合が多いように感じます。もちろん眠れないよりは良いのかもしれませんが、どうも身体を自ら良くして行く方向に進んでいるようには思えません。

※これは後述しますが特定の薬によって睡眠状態になってもレム睡眠に移行しないことがあるからです。

いずれにせよ睡眠が自律神経系の調整も含めた自然治癒力の時間であるならば、自然で健康的な睡眠を取り戻すことは、現在患者さんが抱えている症状を改善するためには非常に重要なことなのです。

皆さんは感覚的にはこのことを当たり前だと思っていると思います。ただご自身の睡眠の質が悪化していることにはなかなか気づきにくいものです。気づくのは奥さんやパートナーの方が多いと思います。

睡眠障害とはどういう状況なのか?

睡眠の目的と重要性がご理解できたと思いますが、次に睡眠障害(入眠困難や早朝覚醒)とはどういった状態なのかを説明いたします。

結論から言うと睡眠障害とは「睡眠全体の深度が浅く、レム睡眠が不足している状態」と言えます。

まず健康な人の睡眠にはノンレム睡眠(約90分)とレム睡眠(約20分)が3、4セットほど交互に繰り返すうちに覚醒していきます。

そしてノンレム睡眠は「大脳皮質の休息」、レム睡眠は「骨格筋の弛緩と自律神経の調整」の意義があると言われています。睡眠状態が良くない人はレム睡眠が不足している状態だと言われています。つまりノンレム睡眠だけでは日中の身体の疲れや自律神経の乱れは治らないということが言えると思います。

不規則な睡眠が自律神経失調症やうつ病を促すことがよくわかると思います。また自律神経系が乱れた病態というのは夜間の副交感神経への移行に異常をきたすためさらに睡眠障害を助長していくことになるのです。睡眠障害と自律神経の乱れの負の連鎖に陥るわけです。

下記に睡眠障害の類型とその状態をまとめます。

◯入眠障害:不安、神経症、興奮(副交感神経への移行がうまくいかない)

◯早朝覚醒:レム睡眠の減少による。精神疾患、うつ病

◯塾眠障害:

(1)老人性不眠:睡眠の質は悪くないが夜に眠れないことで気分的につらい。尿意なども関係。

(2)うつ病:レム睡眠減少により寝覚めの時間は早いが自律神経が調整されていないため午前中は倦怠感が強く、午後は徐々に持ち直す。

なぜ不眠症になるのか?

1)神経症性不眠(一般的な不眠)

まず人間の脳の深部には脳幹網様体(のうかんもうようたい)という部位があります。そして人の覚醒状態を決める役割をしています。簡単に申し上げると思考、視覚情報、知覚情報、運動情報、情動などの情報がその部位を経由しています。そしてそれらの情報の和が多ければ多いほど意識はクリアになり、少なければ意識は低下して睡眠状態へと移行するのです。

例えば寝るときには思考を減らし、電気を消し(視覚)、扉を締め(聴覚、温度覚)、横になる(運動情報)ことで脳幹網様体の情報量を減らし、意識的に眠ろうとします。

逆に歩行(大腿四頭筋)やアクビ(咬筋)をすることは覚醒するのに役立つのです。

不眠症になる人は頸部や頭部の筋緊張が強く、脳幹網様体への情報が多くなり、意識がクリアで考え事も多くなります。そして深い睡眠(ノンレム睡眠)にならず、結果としてレム睡眠に移行しないまま覚醒してしまうのです。

2)老人性不眠

老人性不眠は脳幹網様体の興奮に加えて視床下部の機能低下が関係していると言われています。視床下部の主な役割は体温調節、水分調節、食欲調節、睡眠調節、体内リズムです。つまり脳幹網様体の問題に加えて体内リズムがうまく刻めなくなるため分断睡眠、昼寝、早朝覚醒などが起きやすくなるのです。

不眠症の鍼灸治療

不眠症の方の特徴としては何らかのストレスが恒常的にあること、そして頭部や頸部、背部の緊張が強いことがあげられます。ストレスを減らすことは大切なのですが、治療の優先度としてはストレスの軽減よりも肉体的な緊張度を取ることの方が大切です。

まず大脳皮質の過剰興奮(思考、思い悩み等)は頭部や頸部の筋疲労を生みます。そしてそれらの筋緊張自体がインパルスとして脳幹網様体へと送られます。つまり頭部、頸部の経穴(天柱、完骨)などへの針を打ちます。

次に副交感神経優位(リラックス状態)へと身体を移行させるために背部への針治療と間接灸(熱くない灸)を施します。ツボとしては背部兪穴と言われる脊柱起立筋群にある経穴の中から選穴することになります。

そしてストレス筋群と言われる、ストレスを受けたときに緊張しやすい筋肉を緩める目的で針治療を行います。具体的には、僧帽筋、胸鎖乳突筋、咬筋、脊柱近くの伸筋、棘下筋、大殿筋、中殿筋などです。夜にはぎしりや食いしばりをしてしまうので上記で挙げた咬筋の緊張が解けていないからです。

ちなみに伝統的な東洋医学の代表的な睡眠のツボとして太陽穴、安眠穴が挙げられますが、それぞれ頭部(咬筋)や頸部(後頭下筋群)にあります。

患者さんの症状の重さによって治療回数は異なりますが、鍼灸治療をしていくと睡眠の質は向上していきます。そして、もともと抱えている疾患にも非常に良い影響が出てくるものです。

藤沢、鎌倉、茅ヶ崎をはじめ神奈川県で不眠で悩んでいる方はぜひ当院にご連絡ください。睡眠専門の鍼灸治療を提供いたします。

不眠症患者さんの日常的注意事項

治療以外の日常的な対処法として下記に箇条書きいたします。

◯寝る前にスマホなどを見ない。

※スマホやタブレットの様々な弊害についてはスウェーデンの精神科医の書いた『スマホ脳』という書籍がおすすめです。

◯起床時に日光の紫外線をしっかりと浴びて体内時計をリセットし、夜間のメラトニン分泌を促進する。

◯眠る3時間前までに軽い有酸素運動を行う(ジョギングを15分〜30程度で良いと思います)

 ※週に2、3回できれば良いと思います。

 ※ストレスホルモン(副腎皮質刺激ホルモン)自体は眠りを妨げるのですが、ストレスがなくなると睡眠薬様物質に変わります。多忙な仕事や号泣などのストレスの後にぐっすり眠れた経験のある方は多いと思います。意識的にストレスを上げるために運動ストレスを加えるのです。

◯眠りたい時刻の2時間前に体温を1℃上昇させるべく入浴する。

 ※脳は一定の温度に上がると危険と判断し活動を一旦停止し、休息しようとする機能があります。

◯午後はもとより午前中もカフェインの入ったコーヒーをやめる

 ※それでもコーヒーを飲みたいという方におすすめのコーヒーがあります。クライス社のカフェインレスコーヒーです。このコーヒーはネスレなど他社のカフェインレスコーヒーに比べて味が本物のコーヒーに近いです。コーヒー専門商社の知人に聞いたところクライス社のデカフェの製法が特殊だそうで、それが味の違いに出ているようです。アイスコーヒーにしてもそこそこ美味しいです。私も飲んでいます。

https://www.amazon.co.jp/dp/B01N7N5X7R/

 ※そもそも不眠になる患者さんというのは自律神経が過敏に動きやすい特徴があると感じています。ですので午前中であってもコーヒーによって強制的に興奮状態を作りだすことでその日やその次の日にも影響してしまいます。

◯甘い清涼飲料水を飲まない

市販されている甘い清涼飲料水は控えてください。血糖値を急激に上げたり下げたりすることは睡眠に限らず様々な症状を引き起こします。清涼飲料水の中毒になっている方は、やめるのが非常に困難な場合もありますがなんとか頑張ってください。

現在、期間限定で初回特別価格を設定しております。この機会に本物の鍼灸をご体験ください。

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