めまい(藤沢・43歳・女性)

めまい(目眩)にはめまい専門の鍼灸治療を受けてください。

患者

年齢・性別:43歳、女性

住まい:藤沢市

職業:主婦

症状・経過

・歩行時にフワフワとした感じがして、まっすぐに歩けず片一方に寄ってしますような感覚。

・頸部(首)を回転させたり、前後に動かすような動作でフラッとする。

・首、肩のコリを強く感じる。ときに吐き気をもよおす。

・抑うつ傾向(うつ病の手前)があり、簡単な家事をこなすのも苦痛。

・音に過敏。普段なら気にならなかったようなテレビや外の物音などに耐えられない。

・鼻の閉塞感(原因不明の鼻づまり)

このような不定愁訴が複数ある場合は、念のため患者さんの幼少期にまで遡って問診をするようにしています。これは私の感覚値でもあるのですが、不定愁訴が大人になって多く出てくるような患者さんは幼い頃から何らかの愁訴を長く持っており、家族関係などが影響しているケースが多く見られます。

この患者さんのご家庭にはお母様との親子関係の問題がありました。母子家庭でお母様はお仕事をもっていたのですが、職場などの愚痴をお子さんである患者さんに毎日のように聞かせていたのです。この場合子どもは常に聞き役で、自分の話したいことも我慢して押さえ込むようになっていたようです。子どもは本来は何も考えずに思ったことや感じたことをお母さんにぶつけるのが自然な状態です。その点でかなりいびつな幼少期になってしまっていたのです。そういったことが巡り巡って身体の不調を起こすことは頻繁にあると思います。自然な感情や気持ちを抑え込むと自分の頭からは消えたように見えても、心身の不調として出てくるように思います。親子関係というのは想像以上に心や身体に傷跡を残して、大人になったときの健康状態や周囲との人間関係に大きな影響を与えるものです。私は日々、不定愁訴や慢性痛を抱える患者さんと接していて、非常に強くそれを感じています。

高校生ぐらいからは首こり・肩こりを自覚することが多かったようですが、その状態に慣れてしまっていたため特に不都合を感じることはなかったようです。めまいに関しても椅子から立ち上がったときに血がさーっと頭から下に降りて行くような感覚(起立性低血圧)がたまにあったようですが、これに関しても当たり前のものとして受け入れて生活していました。

しかし40代を過ぎたあたりから春になると自律神経系が乱れて、めまいや抑うつ状態、耳鳴り、耳の閉塞感(耳が詰まる感じ)、音過敏症などが出るようになり今回はさすがに何か治療の必要性を感じて病院などを回ったようなのですが、内科、耳鼻咽頭科、脳神経外科などに行っても納得のいく説明がなかったようです。耳鼻咽喉科では良性発作性頭位めまいと診断され、めまいの薬をもらったもののほとんど効かない状況でした。そんな中でネットなどで自律神経失調症やめまいなどの治療ができる鍼灸師がいるということを知って当院に問合せをいただきました。

めまいの鍼灸治療

春になると自律神経系が乱れやすいこともあって、めまいの患者さんが増えてきます。

めまいには様々な種類があり回転性めまいのメニエール病、良性発作性頭位めまい、突発性難聴、頸性めまい(脊椎症、頸部のコリ、ムチウチなどによる)、降圧剤の副作用など様々なタイプがありますが、薬の副作用以外のめまいに対して針治療は効くケースが多いと思います。

まずこの患者さんの病理は非常に複雑です。前述したような幼少期の親子関係が今も尾をひいていると感じられました。よってムチウチなどの頸性めまい(首の筋緊張からくるめまい)などのような単純なむちうちではないため、鍼灸だけでどの程度まで治療効果を発揮できるのか私自身も確信を得られないまま治療をはじめました。

ただ根本的な病理は複雑でも最終的に身体に現れている状態は比較的シンプルなもので頸部(くび)や肩の極度のコリが見られました。首に関しては筋肉が緊張のあまり短縮して後頭部の下が盛り上がっているほどでした。このレベルの首こりというのはレアケースだと思います。ただ精神的な緊張からの筋肉のコリというのはこのように筋肉が丸くなるほど短縮するものなのです。たとえばうつ病の患者さんは脇にゴルフボール大の過緊張した筋肉のボールのようなものが見られることがあります。これは大円筋が病的に過緊張したものです。

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さてこの患者さんのめまいやうつ状態の直接的な原因は頸部(くび)にあると思われました。うつ病に関しては、近年デスクワーカーに多い仮性うつなどど呼ばれている新型のうつのほとんどは「頸性うつ」が多いと思われます。首のうつなので心療内科などに行っても治らないばかりか、悪化して職場復帰できなくなったりするのです。幸いこの患者さんは診療内科・精神科で薬をもらうことに抵抗を持っていたため受診はされていなかったのです。

治療方法として手部、頸部、肩部、背中の自律神経を整えるのに適したツボ(上天柱、百労、頸部・胸部夾脊穴、百会、頭維、太陽、魚陽、神門)や内耳の血流を改善するツボへの刺鍼と木の枕を使った頸部の脊柱の矯正を行いました。初診の直後は首コリ・肩こり・眼の見えやすさが改善程度でめまいの改善はさほど感じなかったようです。次の日に好転反応があり、身体の倦怠感(だるさ)が強く出たようです。1週間後の2診目では大きく効果が現れ、その日のうちにめまいがほとんどなくなり、首や肩は「肩が無いみたい!」と表現されるほど改善したようでした。また睡眠の質が大きく改善されたことで抑鬱状態も徐々に改善していったようです。音過敏症も抑うつ状態の改善とともに3ヶ月ほどで消退していきました。今では月に1、2回程度の治療をバランスを保てています。

自律神経系の失調が強く関係すると言われているめまいというのは一直線に改善することの方が稀で多くはアップダウンを繰り返しながら時間をかけて徐々に改善していくことが多いです。治療開始から1ヶ月ぐらいは毎週来て治療していただくことをおすすめしています。2、3回目までに治療効果を実感していただくことが多いと思いますので、通うモチベーションにもつながると思います。

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一般的なめまいのお話

めまいの種類と原因

めまいとは耳の奥の平衡感覚を司る「前庭」と呼ばれる器官に障害が起きて正常に機能しなくなることで生じます。回転性めまいと非回転性めまいに分けられます。

(1)回転性めまい

難聴を伴うものの中で代表的な疾患として難聴・耳鳴りなどを伴うメニエール病があります。メニエール病は内リンパ水腫が原因である可能性が高いと近年の研究で明らかになっています。(2009年 大阪市立大学 山根英雄教授) 

まず、下図にある半規管や前庭と呼ばれる平衡感覚を司る器官にはリンパ液で満たされ、身体の傾きなどに応じてリンパ液の流れが生じます。その流れを有毛細胞という「毛」の動きによって身体の位置を把握しているのです。メニエール病は何らかの原因にリンパ液が限界以上に充満することでそれを覆っている膜が破れます。破れて外に漏れ出るときに一方通行の急激な流れを生じるのです。それを「毛」が感受するため止まっていても目を閉じても一方向に回転するようなめまいを感じるのです。簡略化して説明すると身体を右に傾けたときには右にリンパ液が流れるので、身体が右に傾いていると感じることができます。この流れが傾きと関係なく起きてしますのがメニエール病の病態というわけです。大事なのはここからなのですが、ではなぜ前庭や半規管で内リンパ水腫が起きてしまうのでしょうか? これは推測も含むものなのですが、交通事故などの場合を除いて内耳の近くの血流やリンパ液の流れが自律神経の乱れによって停滞するためだと思われます。それは内耳の水の流れを改善するような首や耳の近くのツボの刺激や、頸部・背部の自律神経系を整えるツボの刺激によって回転性のめまいも改善しているからです。改善する期間には個人差がありますが、ほとんどの人は改善しています。

難聴や耳鳴りと伴わない回転性のめまいは「良性発作性頭位めまい」と呼ばれているのですが、臨床の現場ではしばしば難聴・耳鳴りと伴わない場合でもメニエール病と診断されている場合もあります。

(2)非回転性のめまい

首の奥の筋肉の過緊張に起因するめまいの中で頻繁にお目にかかるのが「頸性めまい」と言われますものです。これは前述のメニエール病とは全く原因が異なります。

まず首の奥の筋肉(後頭下筋群、頭板状筋、頭最長筋、頭半棘筋)には身体の平衡感覚を感受する固有受容器というものが存在しているのです。つまり頸部(くび)が傾いて片側の首の筋肉が緊張すればその緊張に応じて脳は傾いていることを認識するわけです。これがもし頭部の傾きと関係なく首の筋肉が緊張していたとしたらどうなるでしょうか?頭はまっすぐでも平衡でないと脳は判断してしまうわけです。これが首の奥の筋肉の異常な緊張によって引き起こされるめまいにつながります。

この病態のめまいの場合は頸部の深層筋の手で触って過緊張を起こしているツボや筋肉への刺鍼した後に、手で上部頸椎の調整を行い頸部を正常に戻すことで高確率でめまいは改善してしまいます。

回転性・非回転性いずれのタイプにせよ正しく病態を把握した上で鍼灸治療を施すことで症状は改善していくと実感しています。耳鳴りや難聴などの随伴症状もゆっくりと改善するケースを多く経験しています。耳鼻科などの病院での投薬治療で治らなない方はぜひ当院までご相談ください。

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